ラビネア制圧-2
管理人の屋敷の制圧は本当にすぐに終了した。抵抗してきた使用人の殆どは磔にされ動けなくする位で終わらせていたが、管理人家族は無能であるとエストが判断した為、まとめて殺害されていた。システムに関してだけ言えば優秀だろうが、それは前任の者が作成した物をそのまま流用しているだけに過ぎず、より面倒なルールを追加するのが趣味と言うほどくだらない規則を増やしていた。
しかし逆らえばこの街から追い出すと話していた為、冒険者達は仕方なくその規則に従っていた。幸いにも色狂いな所は無かった為に彼等は冒険者達から反逆される事は無かったが、それ故にこの街に来て1日も経過していない新参者達に屋敷を制圧されるという大失態を犯したのであった。
「……本当にあっさり終わったわね……。でも可決しようとしていた規則が胸糞悪いわ。」
「そうですね……。どこの悪徳領主ですか。まぁ、下手したら次世代でこうなっていたかもしれませんね……。そうなるとあっという間に冒険者達に殺されそうですが。」
管理人の跡を継ぐ予定だったであろう息子の考えていた『僕の考えたラビネアの規律』には女性は領主に純潔を捧げよ的な物が書かれていた。まぁ、下手すると美人ばかりでなく領主となる筈だった息子が気に食わない容姿の者しか集まらないため、次のページで妾などのワードがキッチリと追加されていた。つまり、気に入った者だけを囲おうとしていましたとしっかり明言していた様な物だった。
「……普通に考えてみるとこの規律って何歳からなのかしらね…。」
「下手すると!」
「ロリコンが!」
「「増産!」」
「確かにな。まぁ、次にやるべきはギルドの制圧だが…この屋敷に誰か来ているぞ。人数は……恐らく1人だろう。」
エストは聞こえてくる僅かな足音がこの屋敷に近付いてきている事を周りにいる者に伝えていた。そこで最初に気絶させられたメイドはハッとするが、すぐに表情を戻した。というのも自分の不始末で昼の11時に来させるはずが機密関連の話なので夜の11時と伝えてしまった事を思い出したのだ。自称領主には約束は明日だったと誤魔化したのだが、ここに来る者達には来たときに謝ろうと準備していたのだ。
ご都合主義の様な形でメイドが出てきた理由が判明した後、開いた扉からは3人の女性が現れていた。いや、大橋と瑪瑙はやむを得ない理由でその中の1人が一般的には女性服と呼ばれているメイド服を着ている男性だと認識していた。
この時、大橋は剣城からこの人物がラビネアにいる事を聞いた様な記憶が蘇ったのであった。ただ、今の状況にどう対処すべきなのかは分からないまま、僅かな沈黙がその場を支配するのであった。