怨念籠もるダンジョン-2
ダンジョンに辿り着いた2人はその穴から満ちてくる臭いに思わず鼻を塞ぐ。ただ、片手を塞いだままだとまともに闘えない為、彼女達は鼻を塞ぐためにシンクロ用の鼻栓に似た構造の物を即興で作り上げて少しでもマシな状態にした。
「死臭以外にもカビの臭いやヘドロの臭い……後は何の臭いか分からないけど何かが腐った臭いがするわ……。」
「そうですね……。次第に気にならなくなるとは思いますが急いで攻略してしまいましょう。何日もここにいる事なんて出来ませんからね……。」
一点特化で魔法を覚えているため、2人は浄化や消臭に関わる魔法が使えるわけでは無かった。この為、彼女達は少しでも早くダンジョンを攻略してしまう事を目的として歩き始めた。
「……たま~にカビの塊からアイテムっぽい物が手に入るけど……これも持ち帰るべきなのかな?」
「一応持ち帰りましょう。最悪ガチャポイントに変えてしまえば良いですからね……。」
「鑑定してみるとスキル石とかスクロール的な感じで書かれているんだけど……使い方が分からないしねぇ……。」
今の所オークションなどで金策する事が出来ない今、こうしたアイテムはガチャポイントを稼ぐのに必要だった為、2人は積極的に拾っていた。ただ、出てくるモンスターがゾンビばかりの為、基本的に大橋が倒す事になっているのだった。
ゾンビは怨念により死体が動いている者もいるのだが、基本的に急所部分……特に動きの多い心臓部分はドロドロネチャネチャグッチャグチャとオノマトペが使えるくらい気持ち悪い感触となっていた。動く度に再生しては怨念の力で溶けるのを繰り返しているためだろう。故に肉弾戦メインの瑪瑙は余程の事が無い限りゾンビ戦には参加していなかったのだった。
「……あぁ~、アイツと一緒にいた時は楽だったわ……。洗浄結晶を入れたウエストポーチに入れるだけで新品同然に綺麗になっていたわけだし。」
「そうなんですか……。ゾンビの肉塊はネチャネチャと服に染みこみますから余計に羨ましいですよ。なんで持っていかなかったんですか?」
「アイツはいつもウエストポーチ持ち歩いていたし、最初の襲撃の後別れちゃったのよ。〖人口洗浄結晶〗売っている場所にも行ったことはあると言われても、私が来たときには既に別の場所だから寄れもしなかったのよ。」
2人はそう言いながらゾンビの肉片を踏む感触を堪えていた。死体が残るタイプのダンジョンである為、狭い通路だとゾンビの死体を踏みつけながら進まなければならないのだ。異臭にやや慣れてきた2人は、今度は感触に耐えながらダンジョンを進んでいくのだった。