やはり想定外の事をしていましたか-1
漫画をひたすら読んでいた大橋と瑪瑙の2人はようやく足の感覚が戻ってきていたが、どちらが言ったのか分からないほど自然にこの言葉が出ていた。
「そういえばステータスってどうなってるんだっけ?」
その言葉が出た後、2人はよくよく考えたら……と思っていた。これまでの訓練がスパルタだった事や、アベル達や剣城達に毒されてステータスの確認を忘れていたのだ。
「……取り敢えず確認してみましょうか……。」
「そうですね。恐らくとんでもないことになっているでしょうけど……。」
恐る恐るステータス画面を開いた2人はその情報量に……いや、明らかに文字化けした情報が羅列されているのを確認していた。完全に壊れた様に見える文字の羅列をひたすら下にスライドしていくと、そこにはこの様な事が書かれていた。
『想定外の事が起こりすぎてサーバーが落ちました。今後は修得スキルのみを表示するように変更されます。詳しくはこのチャット履歴をご覧ください。』
……これ、誰がやらかしてしまったのだろうかと2人は考えながらチャット履歴を読んでみた。すると、初期から既にステータス関連はデータ的にかなり重い物だったらしい。ソシャゲで例えるなら、Wi-Fi環境なければまともに遊べないレベルの重さである。
これはガチャ関係を作成した天使の尻ぬぐいとしてとある天使が無理矢理作成し、転生に間に合わせたのだ。その後は徐々にアップデートしていけば良いと思っていたのだが……それが間違っていたのである。
まず最初に問題となったのはガチャの種類が多すぎた事から、能力者の持つスマホのデータ量が多く、ステータスが中心で無い事からキャッシュが溜まったときに必要なデータもキャッシュと同様に削除されるのである。「某人気ゲームでキャッシュクリアしたらデータもまとめてクリアされちった」と同じレベルの大失態である。
それに加えてキャッシュが増え続けた状態のまま持ち主が死んで放置されたスマホやガチャ機能を中心にコピーされたスマホが量産された結果、サーバーがオーバーヒートを飛び越えて爆発した。そして、その爆発に巻き込まれた天使も死亡してしまったという。
「ユーザーが一気に増えてサーバーが落ちるのはよく聞くけど……これは予想外ね。」
「そうですね。でも損失が少なくて良かったですよ。」
「職業によるステータス補正と種族レベル表示の廃止……これって魔物と同化した3組の誰かのせいで異常を起こしたのかしら?」
真実は分からないが、取り敢えずステータスの一部が完全に使えなくなった事を2人はあまり残念そうに思っていなかった。数字よりも実践の方が分かりやすいからである。そう思った数日後にこの発言に関して後悔する事を2人はまだ知らないのだった。