絆を断ち切る事に快感を覚えるのです-3
大橋が知っている異常性癖的な人間はアベルとマツリカである。実際依存症というかレトロゲームの狂信者となっているファイズの事はあまり詳しく知らないため、アベルとマツリカに関して考えてみていた。
アベルは「悪」という言葉に執着している。自分が善人では無く悪人である事を望む男だ。一応理由としてはアベルが魔王と魔王との間に産まれた子供である事が原因である。まぁ、他にも理由があるのだが、それは今の所グドリャーフカしか知らない事を大橋達は知らない。
マツリカは爆弾魔である。何かしら正式な病名があるのだろうが、流石に漫画などで取り上げられている事は無いため、大橋は爆弾魔のままで認識していた。爆弾による爆発をこよなく愛するキャラは漫画でもよくいる為か受け入れる事は簡単だった。
「……でも私自身は強さも何も変わってない事は罪では無いと思えてきたわ……。」
「それは良いことですね。強くなったと過信したら負けますもの。」
「……せめてその言い方はやめてくれないかしら?私はあのワイバーン達の様な相手に対抗する剣を思いついたんだから。」
考え事をしている時に話しかけられた事で多少苛ついてしまうも、大橋は瑪瑙の言葉を聞いていた。瑪瑙はこの話題だと話が続かないと悟ったのか話題を変えていた。
「……そういえば昔のスポーツ漫画は『死』という概念が表に出ている事が多かったですね。最近の作品では親の都合での転校や不良化等による離脱はあっても死別は無いですし。」
「そういえばそうよね。怪我で選手生命を絶たれたり登場しなくなる、一時離脱はあるけど……死別はあまり見ないわね。」
とある野球漫画では実の父親をデッドボールにより亡くしているという後半には忘れかけてしまう様なエピソードもあれば恋愛メインだが交通事故で双子の弟を亡くすというシーンも存在する。だが最近のスポーツマンがでは自信喪失や怪我での離脱はあれど、死別は過去の物になる事が多い。最低でも本編開始直後で出てくるくらいであり、途中でメインメンバーと死別する事は少ない。
「私としては腐的な形でスポーツ漫画のメンバー達が大切にされすぎている気がするんですよ。そのせいか安心しすぎているんです。最初に死人が出ても中盤からは誰も死なないからって。それは許せないと思えてきますよ。絆を断ち切るからこそ残る者達の絆が深まり、それをまた断ち切るのは……想像しただけでも極上の快楽だと分かりますよ~。」
途中までいい話風だったのが変貌してしまった事で、大橋はやれやれと思いながら週刊少年誌に同じ名前の漫画があるサッカー漫画を読み始めるのだった。