茫然、騒然、大接戦-4
瑪瑙と大橋の喧嘩が終了してから数時間後……ほぼ無傷のドラッヘナー姉妹以外をベッドに寝かしつけた頃の話である。気を失って倒れていたエストが目を覚ました。エストは周りを警戒していたが、ドラッヘナー姉妹に戦が終わった事を告げられると警戒を解いていた。流石に大丈夫と言われて警戒し続ける必要は無いと感じたのだろう。
「……結局、あの男は倒せたがそれまでだった訳か。」
「多分!」
「そうだと!」
「「思うよ!!」」
そう言いながら病み上がりのエストをいじろうとするドラッヘナー姉妹は、エストを大橋と瑪瑙の下に向かわせないようにしている様にも見えた。しかしそれに関してファイズやアベルは何も言わないでいるのだった。
「………っつ。全身が筋肉痛の様に痛いです……。」
「筋肉痛だけじゃ無いわよ。明らかに骨何本か持ってかれてるわ…。お互い本気になりすぎたわ。」
「そうですね。口がなんとか動かせるくらいで、寝返りなんてとてもじゃ無いですが無理ですよ。」
そんな攻防に気付かないまま、並べられたベッドに寝転びながら2人は会話を続けた。この話は誰にも聞かれないと確信しているのか、思っている事をズバズバと言いあうのだった。
「今思えば私達は絶対に勝てない物に、この世界に来る前に出会っていたのよ。その時の気持ちを、絶望感をなんで忘れていたのかしらね……。」
「慢心ですね。あれだけ特訓してきたから問題ないと思ってしまったんですよ……。」
「けど、相性1つで引っ繰り返されるなんてね……。」
2人は自分達が転生する切っ掛けになった巨大隕石の事を思い出していた。あの隕石は現在の力でもまだ壊せそうに無いと思えるほど巨大であり、頑丈であった。少し先の未来から転移してきた者達により被害が帝高校の敷地だけしか無かった事を知らされた時にはさらに驚いていたが、隕石が落ちて逃げ切れなかった時の無力感を改めて思い出していた。
転生して間もない頃はショックで記憶が無くなっている物や、寝ていた為気付いていない物、屋根裏に潜んでいた為気付かなかった者などの存在もあり重要視していなかった。だが現在はあの時の無力感に比べれば……と比較対象が出来た事により、大橋は少しずつ鬱状態から回復していた。
しかし、大橋の鬱っぽい状態が回復する事は出来たが……その代わり、瑪瑙に芽生えた異常と呼べるレベルの心情の変化を大橋は修正出来そうに無いとため息を付いた。修正不可能になってしまったが、普段はいつも通りのままでいてくれると信じているからだ。しかし瑪瑙の変化は後に色々と厄介事を起こすのだが……それはまた別の話だ。