VSワイバーン-4
エストやドラッヘナー姉妹と違い、近距離戦に特化した瑪瑙は最初こそ奮闘していたが、疲労が溜まった結果、兵士達が一斉に彼女の体を貫いた……様に見えた。だが、彼女の体が霧散した後、行き場を失った槍は向かい側にいた味方の兵士達を貫いていた。
「……別に一対多を強要されてそれにのこのこと従う必要はありませんからね……。でもまさかイメージするのがここまで簡単になるとは……アニメや漫画は偉大ですね……。」
瑪瑙はそう言いながら某魔法少女が2人でママになり、対魔物から格闘系に変化したような魔法少女作品の対戦を思い出す。彼女が参考にしたキャラは負けていたが、それでもイメージをするには持って来いな戦い方だった。まぁ、キャラはトンファー的な武器を持っている為、全てが同じ訳では無いのだけど。
「……それで、私の最後の相手は貴方になりそうですね……。」
「だな。少なくともあの中に入っていく勇気は持ち合わせていない。ここで有力な戦力を削ぐ事に集中した方が良いだろう。なぁ、テスタロッサ。」
テスタロッサと呼ばれた紫のワイバーンはコクリと頷く。このテスタロッサというワイバーンは騎手であるミレダニアの祖父から受け継がれてきた程長い時を生きた英雄である。もっとも、彼の祖父の子である父親がバカをやらかして庶民となり、彼が孤児となったのでその事を知るのは誰もいないのだが、本人達も気にしないだろう。
「では、参ります!」
ようやく一対一となった事でやる気を出した瑪瑙はいきなり大技を使おうと構えていた。先程の様に分身を使う戦法も出来るのだが、アレは最初から本物がそこにいると思わせなければすぐに騙していることがバレる。それに加えて瑪瑙は先程自滅した兵士が乗っていたワイバーンの事を思い出す。
ワイバーン達は嫌々兵士達に従っている様に見えていた。これは兵士達を信用していない訳では無い。分身は瑪瑙の風魔法にて作られている為、無臭に近い物体なのだ。その為ワイバーン達は自分達が闘っていた人物が偽物だと気付いていた。だからこそワイバーン達は本物を探せと言わんばかりに抵抗していたのだと推測できた。その為、瑪瑙が最初に狙ったのはテスタロッサの方だった。テスタロッサを潰せば分身攻撃も有効になるだろうと考えたのだ。
「落ち行くは流星の如し!風星蹴落閃!」
跳び上がった後、風魔法を駆使してエグい角度から撃ち落とされる踵落としを放つ瑪瑙は……テスタロッサの逆鱗にその攻撃を当ててしまった。その結果……テスタロッサは怒り狂い、背に乗せていたミレダニアをふるい落とした後、怒りに任せて瑪瑙に向かい突撃してくるのだった。