モンストロ帝国の戦争準備-1
新ゲーテンベルド王国からかなり離れた場所にあるモンストロ帝国では新ゲーテンベルド王国の領地を奪おうと計画している軍がいた。その軍を従えるのは第1王子であるキューラリー・フェン・モンストロ。彼は自分の王位継承権が第八位である事に納得していなかった。
第2王子は人望があり、王位継承権も一位である。元々キューラリーが美人の嫁が欲しいと公爵家の令嬢を次々と振った事、騎士団員の娘を周りの制止も無視して半ば強引に娶った事も含めると彼の人望が低いかがうかがえてしまう。
隣の小国では人望の無い小太りな男が長男であるだけで王位継承権第1位である事もまた、彼が納得できない理由であった。それ故に彼は新しい領地を新ゲーテンベルド王国を潰す事で奪おうとしていたのである。
「……お前達もよく着いてきてくれたな……。騎士団で鍛えたお前達がどれだけ活躍できるかがこの戦の命運を分けるであろうよ。」
「ははっ。今、こうして騎士となっている恩を忘れることはありません。」
一応、キューラリーも孤児院等の運営に力をいれていた事から、平民達や元孤児の騎士達からの人望は厚い。だが、巧妙な手口でそれを悪評に変えているのが王位継承権第6位の王妃そっくりな娘である。彼女は彼の功績を隠す事でより悪評を広めていたのだ。
「……これより飛龍騎士団はゲーテンベルド王国に進軍する!龍殺し亡き今、勝利は我々の物であると思え!!」
「ははっ!」
こうしてキューラリー率いる騎士団約5000名はワイバーンに乗って進軍を開始した。隣国とは同名を結んでいる為、事前に攻めるのはゲーテンベルド王国であると伝えている為に撃ち落とされる事は無い。その為、最速でキューラリー達は新ゲーテンベルド王国の領地に辿り着くのだった。
「………あらあら、お兄様方は飛び立ってしまいましたね……。まぁ、凱旋出来ぬ様にしておくのも悪くありません。テリュティード、ササッと隣の国を襲撃しなさい。全てはキューラリー兄様の評判を落とすためですわ。」
「かしこまりました姫様。」
こうしてまた別の飛龍騎士団も飛び立っていく。ただ、それを隠れて聞いていた隠者がまた別の王子や王女へと連絡し、色々と陰謀を企てていた。ただ、それ等の情報を全て従者に知らされた第2王子キュローラルはため息をついていた。
「……せめて王位継承権の争いは他国を巻き込まないで欲しいなぁ……。」
彼は胃をキリキリ痛めながらこれまで迷惑を掛けてきた者達への謝罪文の山がようやく崩れてきたのが、また増える事を察して深いため息を付くのであった。