一点集中魔法講座-3
「……本当に情けないのぉ……。」
マツリカは新しく手に入れたムービングファストボールが持ち味のピッチャーが主人公の漫画を読みながら3人の魔法について分析していた。一応彼女達には素質はあるがそれを充分に生かし切れていない事を指摘する。
「特に大橋、お主は魔力量は他の2人と違うんじゃから工夫せい。圧縮すらしないのならば威力は分散するばかりじゃぞ?まぁ、早くしようと横着していた事は分かるのじゃがな。」
「……確かに圧縮はしようとしていたわよ!でもあれが限界なのよ……。何かコツって無いの?」
「……コツかの?それなら………まぁ、感覚で覚えるのが一番じゃな。口で説明するにはちと面倒くさい。」
マツリカはそう言った後、マントを取り出していた。そのマントはとても大きく、巨人が使う物では?カーテンなのでは?と疑っていたがマツリカはマントだと言い切るのだった。
「お主等がしている圧縮の方法は大体こんなもんじゃろ?こう、無理矢理丸めて投げる様な物じゃ。まぁ、圧縮するイメージもしやすいし、何より絵になるやり方じゃからのぉ……。」
「……確かにそうだな。この圧縮方法はどことなく良い感じがする。」
エストがそう答えると、マツリカはため息をついていた。確かに魔法に美を追究するのは悪くない。マツリカ自身も爆発と言う名のロマンを持って行動している為、キッパリと否定はしない。
「じゃがこの方法だと一見まとまっておる様に見えてばらついておるのじゃよ。ほれっ、放っただけでポンッと広がってしまうじゃろう?」
「……そうね。」
「じゃから広がらん様に圧縮する事をイメージするんじゃよ。こうやって円を描くようにするとかな。イメージが強く出来るようになればより速く圧縮できる。……まぁ、お主等に使いこなせるかは不明じゃけどな。」
マツリカはそう言いながら見本を見せる。それをじっくりと観察した3人はファイズに頼んで壁を作って貰い、そこに先程学んだ技術で攻撃していく。しかし魔力を動かす事にスタミナを削られ、1時間もしない内に3人は汗だくとなっていた。まぁ、その理由はエストが使う魔法が炎魔法であるからなのだが……その辺りとは関係なく、汗だくになった3人は息を整えながらイメージを固めるのだった。
「………まぁ、圧縮する事を覚える事が出来れば、まだ勝てる様にはなるのじゃし、何より格闘技でも魔力を纏わせる事が出来る様にもなる。じゃがまだまだよの。少なくとも意図しないまま魔力の炎で汗を掻くくらいのレベルでは……成長を感じるのは一年掛かるのぉ。」
マツリカはそう言いながら、漫画が燃えないように訓練中の3人から離れるのだった。