大橋の成果に対する考察-1
黒丸新聞の記事には最高責任者である将軍を殺したのは氷の矢である事が書かれていた。これに関して考えれば3人だと倒せないからアベルがテキトーに殺したのだと思える。ただ、この3人が倒した他の兵士達の強さは……ハルバンシアで最初に出会った敵兵のアベルトという、鞭術40で威張っていた奴よりほんの少し強い程度だった。
仮にも軍帝国を名乗っていた分、一応強い部類だったんだな……と半ば呆れながらも私は運ばれてきた兵士達の体を確認する。すると怪我の仕方を見る限り彼等は一撃で倒されていない事が多かった。……まぁ、戦法的に2回以上攻撃するというのならまだしも……威力的に全力で攻撃しても20発くらいでようやく気絶や負傷による退場と言った所だ。
サイコメトリーみたいな形で鑑定してみると一部は倒れた兵士達を運ぼうとしていた所を不意打ちしたという弱い物虐めに近い形で攻撃しているにも関わらず仕留め切れていないのだ。いや、手加減をしたのなら大学で監督していた安〇先生みたいなセリフを言わなくてもすむのだが、明らかに成長していないのは分かりきっていた。
「……この傷跡から考えるに大橋は……ようやく戦い方を理解したイメージだな。簡単に言えば強くないが弱くも無いカードの使い方を理解して回せるようになった様な……。」
「瑪瑙という方とエストという方は知りませんが大橋殿は……まだあのライダースーツを使用していた時と変わりませんな。」
セバスの言うように、大橋の強さは変わっていない……というよりは訓練してライダースーツを使っていた頃と同じレベルまで強くなったという事だ。だが、それだとそこまで強くなっていない事がうかがえてしまう。一応急激に実力は付いているのは確かなのだろうが、私達が普通に闘ってきた者と比べるとどうしても弱く感じる。
「人を殺す覚悟はあったんだろうが……それだけではダメだと気付いていないんだろうな。」
「そうだねぇ。殺す覚悟を持つ事は重要だけど、それは同時に自分が何かを失う覚悟も持たなければならないんだよねぇ……。」
ディーもそう呆れながら治療を終わらせていた。まぁ、ディーが言ったように大橋達は殺す覚悟は出来ていた。だがしかし、それは自分達の命がある状態で……という物だ。相手を殺しきれなかった場合、その後に来る反撃が怖くて若干ぶれている様なイメージをしながら私は呆れながら負傷兵達の治療を終わらせるのだった。
まぁ、人数があまりにも多かったので兵士達は体育館程の大きさのある施設にて雑魚寝する事となったのだけどな……。