回復魔法の修得についての考察-2
ディーの授業は主に縫合方法やら切除等についてをホワイトボードを用いながら行っていた。ちなみにアシスタントとして何人か研修医が手伝っており、巻き込んですまないとも思えてきた。
「……という事で、今日の授業は終わりじゃな。」
「……いや、これ完全にあれなんだが。医大とかで習うレベルの外科技術なんだが。」
「一応医者やっとる合間に論文書いてみたりした事があったからねぇ……。まぁ、文法が目茶苦茶な時もあったからちゃんと治すのに苦労したけれど。」
どうやら完全に感覚論で書いた論文があるらしく、一応理論としては理解できる人なら理解できるのだが、後世に残すにはあまりにも巫山戯ていた為……数年掛けて書き直したという。確かにスバッとかドシュッとかのオノマトペとも言える言葉ばかりの論文なんて完全に恥掻く記録になるだろう。むしろよくそれ発表できたな……と思えてくる。
「しかし研修医達も大変だな……。」
「いえいえ、体の仕組みの復習になりますし問題ないですよ。片目の視力がもう戻らないのでいっその事治癒班として活躍しようと修行中なんですよ~。」
そんな軽い感じで話してくる研修医も多いがその殆どの国が滅んでいたので笑い話にできないと思えてくる。ただ、ここにも黒丸新聞の手が回っている為、段々とその事を認知している者は増えてきている。そういう者達の殆どがヤケクソになって騎士から医師へとジョブチェンジしようと張り切っている事もあるらしい。
「……まぁ、最初は道具の名称からにしてくれ……。セバスは理解できるだろうが私にはちんぷんかんぷんなんだよ……。医学なんて民間療法やなんかしか知らないレベルだぞ?医療器具なんてメスとか知っていれば良い方なんだ。」
「それは失礼した。次回までに研修医用の辞典を渡しておこう。……ただ、こちらからも質問させてくれ。あの3人はどんな人間なんだ?」
ディーがそう言ったのはアル、リガ、エリの3人の事だろう。3人は衰弱が主な症状だった事から点滴のみでどうにかなっているが、流石にディーでも根本的な手術はできなかったらしい。
「……あの3人は武器と人間のコアを持っていた武器だよ。もっとも今は武器のコアを抜かれてしまっている。だからディーが手術できなかったんだよ。」
「……なるほどねぇ……。しかしこのままだと彼女達は衰弱したままの体力で復帰する事になるけど大丈夫なのかい?」
「そこは鍛えて自衛できる様にしておくよ。」
私がそう言うとディーは呆れているのか期待しているのか分かりづらい顔で私を見るのであった。