メルリスでの治療-4
基本的にメルリスに治療の為にやってくる男性の殆どは護衛を連れてくる事が多い。というのはメルリスでは看護師等は全てメルリスの女性が行うため、使用人を連れてくる必要は無い。家族を連れてくる者も中にはいるらしいが、独身のまま将軍になった者は部下を何人か連れてここに来る。
その部下達の主な仕事は鍛錬等をしながら情報収集する事に加え、自分の軍に味方を増やすために暗躍するという事、そして暗殺されぬ様に監視する事である。その為私に襲いかかってきた者は病気で体が動かないのでは無く、本当に弱かったという事になる。
「……しかし、この世界での療養というのはかなり厳しいだろうな……。」
そう言えるのは普通は何年も掛けて戦争が続いていく様な戦力同士の世界で生きていたからだろう。しかし人間離れした者や魔法の存在から、1年、半年はおろか1ヶ月、果ては1週間で決着が付くことも少なくない。
その為、療養に行ってから帰郷しようとすると国が変わっているなんてよくある事らしい。しかも傷が深く何年もメルリスにいた場合、余計混乱する程変化している事もよくあるそうだ。まぁ、中でも悲惨なのは恋人が既に別の人間と結婚していたり、旦那が取られていたり、子供が婚約者連れてきたりと気が気でならない者も多いそうだ。
「……まぁ、ここで倒れている奴の殆どはそんな壮大なバックストーリーがあるわけでは無いけどな……。」
騎士1…療養護衛について行かされた後、娘が結婚した。
騎士2…療養護衛について行かされた後、同性愛で一緒に暮らしていた同僚が妹に寝取られた。
騎士3…療養護衛について行かされた後、帰郷したらその領が壊滅しており、療養も兼ねて護衛として再びこの地に来た。
騎士4…療養護衛について行かされた後、男の娘系看護師と恋に堕ち、上司の療養が終わってもここに残る予定。
騎士5…5年間の療養が終わったがその間に自分の故郷が50回程地名が変わっており帰るのもアホらしくなり、自警団として活動中。
うん、まぁこれくらいならまだ辛いと思えど大きな事では無いだろうと思える。しかしこの世界でも騎士達は同性愛を求めるのだろうか?と思いつつ、私はコイツ等が私を襲った理由が分からないと感じるのだった。いや、手籠めにしてやるとか話していたような気はするのだが……まぁ、聞き間違えなのだろう。
「……取り敢えず色々試せるから襲われるのは良いんだが……そろそろ面倒になってきているしなぁ……。」
私はそう思いながら黒姫やアルミナ、ランタン達のいる病室へと戻るのだった。