メルリスでの治療-3
「……じゃあ、私は少し出てくる。」
「分かりました、剣城お嬢様。夕食までにはお戻りくださいませ。」
セバスの言葉を聞いた後、私は病院の外へ向かった。途中で患者の何人かにナンパなのか小学生を誘拐するのか分からない様な声を掛けられたが一睨みすると呆気なく去って行った。まぁ、失禁されないだけマシだなとも思いながら私は病院の外にある広場に向かう。
「……キャラバンはディーに頼んで強引に隠している様な物だから使えないが……まぁ、特訓という物は別に自分の得意分野を伸ばす事だけでは無いからな……。」
少なくとも、アベルやガンダレス、それとジルフェも苦手分野という物は無いだろうが、その全てが得意分野というわけでは無い。その事を考えると苦手分野や経験の無い物を減らしておく方が良いと考えたのだ。最も、戦闘系に限った話ではあるが。
「……アベルと闘うために必要なのは2つ名の状態を維持できるようにしないといけないんだよな……。そうできないと本気のアベルにあっさりと負ける未来しか無いわけだし。」
ただ、その特訓はここではやらないようにしている。というのも面倒な事に何処かの国の権力者や将軍達がいるのだ。ミンティーア王国の様な事にはならないだろうが色々と面倒な事になりそうな気がする。それに加えてさらに面倒な事になる予感もあるのだ。
簡単に言うとまだ『新しい仲間』という予言が終わっていないのだ。まぁ、時期については予言した本人にすら分からない物である為、下手すると新たな仲間=スパイや監視役みたいな感じになりそうだった。
「……まぁ、そうならない事を祈っているけれども引き抜きとかが酷いんだよな……。まぁ、一応バレーシア農帝国所属というか一応責任者が私だからどうにかなっている訳だけど。」
この言葉のおかげでしつこい引き抜きも無くなっていたので良いことなのだが、たまにメリットの無い誘い文句を出す人間もいる。私が外に出た理由もソイツの撃退の為である。もっとも、殺さない事に代わりは無いのだけどね……。
ただ、手加減という物は難しいものの、徒手空拳だけで魔法と剣を使う人間を軽く倒せる体というのは大きいと思えてくる。問題点としては胸が揺れまくって邪魔になる事だろう。しかもこの胸はディーの手でも治療不可の為にタチが悪いと感じていた。
「……せめて昔の姿に戻るスキルがあればいいんだけどな……。」
私は自分が黒姫の催眠術によって長身平坦な体だった頃を思い出していた。……まぁ、あれはあくまで胸に行く栄養を体全体に分散させていただけなのだからもう戻れないんだよなぁ……と悲しい気持ちになる私なのだった。




