メルリスでの治療-1
思い出話がヒートアップした事から逆に二人して院長室を追い出された私達2人は、治療を受けて休んでいるメンバーの元へと向かった。一応私やセバスの顔を立てたのか、全員同じ病室であり、精神的なダメージだけだったテンレが世話をしている。
「……しかしプラシーボ効果はどの世界でも恐ろしい程の爆発力があるねぇ……。極上の肉を焼いただけでこれより酷かった症状が治ったんだろう?」
「……あくまで骨が修復しただけで魔力血路はボロボロなままだったよ。まぁ、テンレは魔法滅多に使わない分影響は無かったけど……アルミナはな……。」
アルミナの魔法で維持されていたキャラバンの異次元空間の一部が魔力血路の不調により乱れてしまった結果、現在は目茶苦茶長いキャラバンとなってしまい、移動するにも一苦労だったのである。その為、アルミナにはなるべく早く回復して貰いたいと思ってはいるが、無理はして欲しくないと思えている。
「まぁ、暫くはここで休む事にしたのは正解だねぇ。あの外から見れば平和な国が近くにあったからこそここも発展したんだけど……流石にあの国が一瞬といえる程呆気なく滅びたのには驚いたよ。まぁ、こちらから戦争を仕掛けない限り向こうは何もしてこないことは黒丸新聞で分かっているんだけどねぇ……。」
「……治療関係で呼びだされる事は無いのか?」
「無いね。あったとしても断る事はできる。私を洗脳した所で軍医の様な動きは無理だね。それに医者ってのはどんな奴でも過労死しやすいのさ。軍医として紛争地帯に行って治療しすぎて眠るように亡くなった人間を知っているからこそ、休ませる奴は休ませているよ。」
そんな事を話した後、私達は病室に向かった。セバスは恋人であるカグヤの元へ行き、その様子を見たディーは驚いていた。というのもセバスは恋人を作った事が無かったらしい。
「……まぁ、無理は無いと思うけどね。昔は仕えるべき者が見つからなければ幼い頃に失った大切な者に会いに行くと言っていたのに……もしかしたら生まれ変わりだったりするのかもねぇ……。」
「……それは……無いと思うけどな。」
カグヤは25歳では無かったと記憶している。だがもしかすると25歳では無い転生者も存在しているかも知れない。……そう思うと私は面倒くさい事になりそうだと思いながら黒姫達が回復しているかどうかを確認するのであった。
「………25歳の転生者という縛りは何の根拠があったのかは知らないけど……これからより複雑な道になる事は確かだろうねぇ。」
ディーはそう言いながら別の患者の治療へ向かっていくのであった。