第1回 夕食争奪レース-3
結局はファイズが乱数調節で同じプリンを2人分用意する事により解決したものの、3人は夕食の間第2回ではどうなるか覚えておけ!と牽制しあっており、大橋と瑪瑙、エストは夕食に全く集中できなかった。
「……しかしプリン1つであそこまでやれるんですかね?」
「……こっちの食事も美味しい物はあったけど……甘味は別物なのかも知れないわね。」
2人はそう言いながら先程見たプリン争奪戦を思い出していた。ただ、これと似たような状況になった時の様にゲームで決める事が無かったのを見て大橋は剣城達と旅をしていた時の日常を思い出していた。
「……でも剣城達の所にいた戦闘特化の人達と闘って勝てるイメージが湧かないわ……。あの戦争の時も私達だけ負けて帰った様なものだもの。」
『……マスターから聞いた話だと殆どお情けで助けて貰ったと記憶しております。』
「……否定できない……。他の人達は全員勝って帰ってるのに……。」
大橋がそう悔しがっているとにこやかな顔をした3人は「……力が……欲しいか……?」と言い放った。瑪瑙はその様子を完全にどこかの漫画で知ったんだろうなと思いながらも、元気良く「はいっ!」と答えた大橋の影響で増える訓練の量を想像してげんなりとしていくのだった。
「しっかし人を殺せる様になっとらんとこれ以上強くはなれへん。少なくとも俺っち達の強さの下には数えきれん程の骸骨が転がっている様なもんや。精錬潔癖なまま強くなった奴なんてそうそういないで。最低でも誰かの骨くらいは埋まっとるわ。」
「そうだな。……つーかよ。グドリャーフカはアレやっている時何処に行ってたんだ?」
「さぁ?その辺りは知らん。ただ裏切る奴では無いわな。これまで育てた人間を切り捨てる事はあるんやろうけど。」
アベルはそう言いながらプリンを食べ尽くす。その様子からバルボアはアベルの言葉にあまり説得力が無いと感じていた。しかし、アベルの自分の下に骸骨が大量に埋まっているという事には共感していた。
「……しかし人は人を殺してこそ強くなるって事ならクライアはどーなんだよ?」
「イアっちもボアっちと同じくらい殺してるで?辺境伯のトコ行く前に戦争があって、それで武功を治めたからこそ騎士団長に任命されたっちゅー事やそうやし。」
ただ、クライアとバルボアの人を殺す事への意義は違っていた為、やはり相容れないとバルボアは感じていた。性格的な物もあるのだろうが女性が本来の持ち主となりやすい覇剣との相性が良い事をバルボアはある仮説をたてていた。その為に後進を育てなければいけないと感じている事をこの中の誰1人も理解していない中、ここにいないグドリャーフカだけが知っている事を彼等は知る由も無く、訓練の日々は続いていくのであった。