第1回夕食争奪レース-1
そんなこんなで乱数調整の恩恵を受けたファイズにアベルが頼んだのは、筋力増強のお供……プロティンだった。ただ、それは幻と言えるほどに不味い一品だ。まぁ、その分効き目は凄いのだが。
「……流石にあれよりは不味く無いと思うけどなぁ。」
『……そうですが、彼女達にとってはまさに、地に堕ちるレベルの不味さなのでしょう。ただ、試供品は誰が飲むのですか?このまま保存する訳では無いのでしょう?』
「あ~、そんなら俺っちが飲むで。流石に飲んでないもん出したら文句言われるやろうし。」
そう言いながら平然とそれを飲み干すアベルを見てファイズは呆れていた。ただ、アベルは七麦茶の六杯目を興味本位で飲んだことがあり、その不味さを克服しようと飲み続けたという経歴がある。その関係でアベルは大抵の不味い物でも飲み干せるのである。
「…そんじゃ、準備バッチリやからサクッと戦闘?訓練始めるか。コースも用意できたわけやし。」
アベルがそう言って作らせたのは……どこからどう見ても某忍者の名前をローマ字にしただけの男の祭典のコースであった。それもバランス製度外視で第一ステージが全部盛りされている為、とんでもなく長いコースとなっている。セカンドステージが無いだけありがたい程の長さである。
「……途中で落ちたらダッシュでスタートまで戻ってやり直しや。まぁ、転生者の2人は無理とか言いそうやけど、これまでの訓練耐えとればこんくらい普通にできるようになっとるで……っちゅーわけで景品の紹介や。」
そう言ってアベルは1位はデザートにプリンが付き、最下位には激マズと言われているプロティンが夕食に着くこと、アベル、バルボア、グラノアの3人もお手本として参加すると言い、スタートしたのだった……が、複数人同時にやるには過酷な競技である事が判明した。
なんせ最初の六段跳びの時点で制空権の取り合いが始まっていたり、相手を煽って反則でスタートに戻させるという攻防が始まっていた。その為、2つ目のアトラクションへと進む人物が現れる迄に軽く30分以上の時間が経過するのだった。
「……昔テレビでやっていた時は無理だって思っていたけど今の筋力ならどうにかできるわね…。ただ押し合いには負けるけど。」
「怪我はしないようになんらかの魔法が掛けられているみたいだからな。これならゴールまでは確実に行ける。……だが、アレは飲みたくない!」
「それは私も同感よ!落ちなさい!」
こうして最下位争いを始めた3人はゴールするまでにかなりの時間を掛け、友情が崩れ落ちかけるのだった。だが、すぐに修復できるのでまだマシなのだろう。