バルボアブートキャンプ-4
「………まず、体術という物はどの様な戦闘スタイルでも必要になる。エストはこれまでは力を付けて高く跳んだり走ったり、たまに回避していたが……その全てに無駄な動きが多すぎる。」
「…どういう事だ?」
「例えば跳躍した時の着地に関してだ。この中の全員が跳躍後、そのまま足に体重を乗せるように降りている。……だが、これでは足への負担が大きくなる。魔法だけを攻撃に使うにしても体への負担を最低限に抑えていく必要がある。とゆーかオマエ等は他の奴等が闘っている所を見たことが無いのか?」
その言葉にエストは明後日の方向を向いてヒューヒューと口笛を吹いていた。他の2人も同じ様な感じで目を逸らしている。というのも大橋は殆ど瞬殺していたり、意識が朦朧としていたりする感じだった為、目に焼き付いておらず、瑪瑙はそこまで観察眼が優秀で無かったのだ。
「まぁ、受け身とかはできる様にしてもらいたいな。お前達は体勢を崩された時点で怪我をするなんて情けない事を平然とやりそうだ。」
「……返す言葉も無いわね……。実際戦闘せずに旅を続けていたわけだし……。」
「私も戦闘訓練といえど必要最低限ですからね……。多分、本当にそうなのでしょうが……。」
瑪瑙がそう言おうとしたとき、バルボアはため息をついた。彼は一応騎士団の強さを確認していたが……実力の高い者はそれなりに強く、バルボアも昔の武器を使っていれば少し苦戦するレベルだった。しかし、中層から下層はゆとりと言える程戦闘を知らない者達なのだった。
「あの騎士団、多分クライアの野郎が見たらお前達の倍のメニューを無理矢理やらせるレベルだな。個人戦ならばお前達でも勝てる様になっている程弱いぞ?」
「……え?」
「まず、夜襲への警戒心が低すぎる。それにどいつもこいつも女々しい顔をしているしな。」
「それは女神の影響なんですが……。」
「まぁ、それはそれ。これはこれだ。夜襲に対する警戒心全くなかったから朝まで瑪瑙がいなくなった事に気付いてないだろうよ……。それくらい平和なのは良いことなんだろうがな。」
バルボアはそう言いつつも、ある事を思い出していた。瑪瑙を連れて帰るときに僅かに感じた強者の匂い……それは騎士団とは全く関係ない事の為ファイズに報告はしないのだった。だが、その匂いは男性では無く女性で有り、ファイズの改造人間と似たような匂いがしていたと思うのだった。
「……とりあえず体術の基礎を色々と学ばせるか……ってどうしたんだ?アベル?」
「いや~、なんか面白そうな事やっとるから手伝ったろうと思ってな~。なぁに、俺っち体術はそこまで重要視してへんから組み手の相手になってやれるで?人数配分3:3になるんやから丁度えぇやろ?」
バルボアはやや呆れながらもいきなり訓練に教官側として現れたアベルを見て嫌な予感を感じてしまうのだった。