バルボアブートキャンプ-2
最初に3人がかりでグラノアに挑んだ3人だったが、結果的に圧倒的な力の差を見せつけられていた。この様子を見てバルボアは情けないとため息を付いていた。
「このままだとグラノアが退屈になって本当に殺しに来るぞ。そうならないようにまずは相手を殺す気になる必要があるな……。勿論、これは訓練だからな……本当に殺すわけでは無い。相手を殺す気でやれるようにやる為の特訓だ。」
「ですね。少なくとも人を殺したことの無い者ばかりですね。エストはまだ復讐という要素がありますが……他の2人は無理ですね。このまま戦場に出せば殺す事を躊躇い、そのまま殺されるでしょう。」
実際、転生者である大橋と瑪瑙が強くなる理由は「死にたくない」である。それはそれで悪くないのだが、それだけであると非常に不安定な形でしか「人を殺す覚悟」ができないのだ。確かに死にたくない気持ちから相手に一矢報いる事、またはそれで助かる事もある。しかし人を殺したという感触やこれまでに無い情報が流れ込み……思考停止か倫理感破綻のどちらかになる。
前者ならばボーッとしている間に別の者に殺されてしまい、後者ならば人を殺すだけの機械として成り下がる。剣城も後者になりかけていると実感しており、それを治療するために善人をわざと殺すという荒療治をする事でどうにか自我を取り戻した。しかし、彼女達はその様な事はできないだろう。
「まぁ、お前は殺す覚悟はとっくの昔にあった。ただ、その代わりにいたぶりたいとか長く苦しめたいという感情も存在していた。だから逆に面倒な性格になっちまったんだよな……。」
「あの父親は痛めつけられないと分からないと思いましたから。……ただ、この方々は痛めつける事はできませんしね。」
グラノアはそう言いながら先程の訓練を思い出していた。大橋と瑪瑙はグラノアに急所部分への攻撃を躊躇っていた。その結果、有効打を与える事が出来ず、グラノアに気絶させられていた。逆にエストはあからさまに急所を狙い続けた為に攻撃パターンを読まれてしまい、グラノアのカウンターによって倒れたのだった。
「まず、戦闘に関しての知識を詰め込まないといけませんね……。瑪瑙さんは型にはまりすぎていますし、大橋さんは闘いを見たことが少ないんでしょう。そしてエストさんですが……。」
「……あぁ、アイツはなぁ……。」
「「素手で闘った事が1度も無いんだろうな……。」」
2人は気絶して起き上がらない3人を放置して今後の方針を固めようとするのだった。……ただ、その様子を見ていたアベルが良からぬ事を考えており、2人の苦労はより大きな物となるのだった。