バルボアブートキャンプ-1
いつも通りに朝の訓練に向かうとそこにはいつも集まっているアベル四天王の3人はおらず、バルボアだけが立っていた。
「……あれ、今日の訓練は……?」
「あ~、それなんだが……かなり面倒な事になっているんだよな……。クライアは元々働いていた騎士団の上層部からの呼び出しだな。辺境伯領の騎士団って事は辺境伯が所属していた国の騎士団もあるわけだ。」
「……まぁ、話を聞く限り辺境伯領が全滅している事に対して色々とあるのだろうな。騎士団には生存者が分かる水晶があるらしいからな。それで不信に思われたのだろう。」
実際、悪の道を生きるという事でクライアは本部に辞表すら送っていなかったのだ。というよりは国の騎士である事を辞めた者という前例が無かった為、彼も知らなかったのである。ただ、クライアはこれを機に情報を集める任務をグドリャーフカに与えられた為、暫くは戻ってこないらしい。
「……で、マツリカは……魔法関連の研究の為に暫くの間旅に出るらしい。まぁ、途中で俺達の元々使っていた武器の整備も頼みに行くらしいからな。」
「……それってアル、リガ、エリの3人から抜き出した武器の事よね?あんまり痛んでないのになんで?」
「……武器は二つ以上持っておくのが普通だろ。それに愛着があるから捨てる事も放っておくこともしねーよ。」
バルボアはそう言いながらマツリカが残したメモ用紙を取り出していた。そこには魔力関連の訓練方法について書かれており、バルボアでも監督できる内容だった。
「……今日からは午前中に魔法の訓練、午後に戦闘訓練を行う事にする。少なくともマツリカの野郎が戻ってくるまではこの体勢となる。……まぁ、元山賊の俺は2人のように町に出ることはできないからな。3人まとめて鍛える役になるのが普通だろ。」
「……正確には4人です。いい加減自主訓練だけでは限界ですから。……なのでより本格的な訓練になりますね……例えるならば『バルボアブートキャンプ』でしょうか?」
「自主練と称して違う名前のブートキャンプをやっていた奴のセリフとは思えないんだが……。」
何日も自主練しかやる事が出来なかったグラノアは訓練に参加する事を表明していた。そしてそれは戦闘訓練がただの体作りだけでは無く、実戦形式が増える事も決定している事の証明でもあった。
「………まぁ、実戦形式の時は手加減してやれよ?最初に実力の差を見せるのは良いが、手加減してやらないと成長するまでに心が折れるからな。」
「分かりました。まぁ、久々にまともな訓練になりそうですよ……取り敢えず最初は3人全員まとめて掛かってきて貰いましょうか。」
「……いや、戦闘訓練は午後からだからな?」
バルボアの一言でムスッとなるものの、実戦訓練という言葉でニヤリとした笑みを3人に向けて見せるのだった。