戦闘訓練 マツリカ教官の場合
クライアとバルボアの訓練をなんとか熟した彼女はマツリカの訓練で倒れていた。ちなみに、朝8時とかなり遅い時間から開始したのにも関わらず、僅か3分で疲れ切っていた。
「……だらしないのぉ。魔力を循環させるだけで倒れるとは思ってなかったのじゃ。」
「……いや、これでも持った方ですよ?普段は2分すら行かないんですよ?」
バルボアの言った様に魔法訓練が主体となっていたが肉体的な訓練の時よりも体の節々が痛んでいたのである。これは無理に魔力血路を使ったのでは無い為命に別状は無い。ただ、マツリカは今の大橋の姿をみてこんな考察をしていた。
「まぁ、恐らくあの旅の中で魔獣の肉を食べていた事により許容魔力が大きくなっていたんじゃろう。じゃが放出どころか体に溜まるだけじゃった。ここで疑似的な魔力血路が作られたことだ循環できるようになったが……ちと、発覚するのが遅かった感じじゃの。」
マツリカが行っている訓練は基本的に魔力を制御する事が目的となっている。だが、明らかに初心者が制御できない程の魔力を保持している大橋は魔力に慣れていたからこそ疲労だけで済んでいるが救いだと、マツリカはため息をついていた。
「……例えるとすれば本来は空のリュックを背負って徐々に中身を増やすところをパンパンに詰め込みすぎてリュックが開けられなくなっている物をようやく背負ったら耐えきれないという感じじゃな。」
「分かり難い例えをありがとう。……でもこれじゃあ訓練にならないわよ。もって3分で立ち上がれる様になるまで体力が回復するのはまだ先よ?」
この状態では本当に訓練も何も無いため、マツリカは困ってしまった。自分が長として育ててきたドワーフ達でもここまですぐに訓練が出来なくなってしまう事は無かったのだ。それに下手をすれば2、3日このままである。その後もう一度クライアの訓練が始まれば……大橋は死ぬだろう。
「まぁ、死んだら死んだでそれまでの人間じゃったという事じゃな……。」
「なんか不穏な言葉が聞こえたんだけど!何?この後死ぬ気で訓練しろって言うの!?」
「いやそこまでは言っておらんわ。しっかしお主は本当に弱いのぉ。あの執事と較べたら……まぁ、10回転生しても届かんレベルじゃな。」
「剣城からの又聞きだけど、マツリカの言う執事の人は【王魂の林檎】って物を食べた人を体術だけで軽く殺した人なのよ?私が勝てるわけないじゃない。」
マツリカはそれを聞いてからまたため息をつく。少なくとも大橋はそれよりも強くなってやるという様な明確な目標が無い事も問題だろうと感じていた。ただその後の2日間……マツリカがお試し教官である間、大橋が自力で立ち上がる事は出来なかったのであった。