新ゲーテンベルド王国会議-2
「まぁ、暫くは基点作りやから戦闘は滅多にせん事になる。多分その間によみっちの訓練という事になるやろ。もちろん、ノアっちもやけどな。暫くはこよっちとレベル合わせて貰うわ。」
「……まぁ、そうでもしないと付いて来れないでしょうしね。仲間になった後、傷も古傷レベルにまで治療されているわけですが……そんな私でも彼女に今のペースで訓練させたら確実に死にますね。」
そんな風に会話をした後、グドリャーフカはアベルにある質問をしていた。それは人の呼び名の事である。彼は基本的に~っちと人を呼ぶ。その為テンレもテンっちかンレっちと呼ぶのが普通のように思えていた。しかし、彼女の呼び方は厳坊と明らかに異質だったのである。
「……なんかよう分からんわ。俺っちも何故かあの娘を厳坊と呼ばなあかんと感じたんや。もっとも、それが何故なのかはさっぱり分からん。情報の中には前世とやらの情報は無い訳やしのぉ。」
「……テンレの前世の下の名前は厳山って言うから間違いでは無いと思うわ。……でも一発でそれを見分けるのは無理よ?少なくともあの子の前世の姿はやくざなお爺さんだもの。」
それを聞いて驚いていたのはグドリャーフカだった。まぁ、前世と殆ど同じ容姿になる者もいれば、性別すら違う体に転生する事もある。その為気にしない方が勝ちだと大橋は言うのだった。
「……基点作りと言っても農業とかもするの?」
「せやな。種とかはガチャでどうとでもなる訳やしな。金についても心配あらへん。金のなる木はいくらでもあるしな。ほれっ、こんな風にあからさまなガチャもあるんやで。」
そう言ってアベルが見せた画面には『現金直送ガチャ』という宝くじの様なガチャがあった。ちなみに最低でも金貨1枚は手に入るというノーリスクハイリターンなガチャである。もっとも、1日1回しか出来ないのが唯一の欠点なのだが。
「……まぁ、この筐体持ち帰れたのは大きいで。これで娯楽も充実する訳や。流石に悪の組織やからってストイックにならんでもええんや。周りから悪と言われながらのスローライフも中々乙なもんやで。」
「……それには少ししか同感できないわね……。一応、私は悪人を叩く側の人間だったから。剣城が殺した人の事を善人と思っていたからこそ出来たんだけどね……。」
「あれは悪人では無くただの小悪党ですから参考にする必要はありませんね。」
グドリャーフカのもっともらしい発言に大橋は頷いた。だが、この中で誰も気がついていない。……会議が進んでいるようで、実は全く進んでいない事に……。だが、その様な事は気にせずに会話は続くのであった。