新ゲーテンベルド王国会議-1
「……報告通り、無事に補給を終えてきた様ですね……ケプッ。」
「……おい、なんで腹一杯何か喰ってきた顔してるんだよ。」
「ものごっつう美味い肉食って来たで~。なんかつるっちが肉焼いとったから一緒に喰わせてもらったんや。」
アベルがそう言うとマツリカは呆れ、バルボアは憤慨し、クライアは彼に残った肉の匂いから思わず涎を垂らしてしまっていた。ちなみに彼は魔物の肉をあまり食べたことが無いのでバルボアやグラノアの様に何でも食べていたり、年の功で欲求から一歩引けるマツリカ、魔物から解体した鯨肉を何回か食べていた大橋、嗅覚機能をこの空間に実装していない人工知能のファイズはどうにか耐えることが出来ていた。
「……失礼、実家では魔物の肉は邪道だと出して貰えなかった物で……。」
「普通に町の中では売ってないのかよ?」
「バルボア、貴方が討伐した領主の活躍により獣は来ても魔物が来ることは無かったんですよ……。なので自分で狩りにも行けませんからね……。それに、たまに差し入れとして貰った物も摘まみ食い好きな幼馴染が食べ尽くしてしまってましたしね。」
クライアは騎士団長らしくフルコースの様な見栄えを重視した料理とお世辞にも美味いと言えない携帯食のみで生きてきた事から食に関して貪欲になってしまっていた。もっとも、体形はそのままを維持しているのだが、アベル四天王七不思議の1つになりそうな現象と化している。
「……しかしその肉……というかウエストポーチを取り上げても良かったんじゃないかのう?」
「それは無理よ。少なくともあのウエストポーチには何かしらの魔法が付けられてる。貴方達なら楽に奪えるレベルだろうけど…格下の私にはあれを奪うのは無理だったわ。それだけ貴重な物が入ってるって事だけど。」
「まぁ、つるっちはまだ奥の手を隠してる様にも見えた訳やしなぁ。俺っちも手の内あんまり見せてないんやけどそれはつるっちも同じやな。でも暫くは脅威となる者はおらんのやろ?」
『はい。今のマスターに恐れる物はありません。最低でも後2年はまともに挑んでくる物の中で私達全員を殺せる人間や軍は現れません。』
全員と呼ばれなかった事=自分がこのメンバーよりも格下と言われている様な物だと大橋は落ち込んでしまう。だが、大橋はある事に気付いてバルボアに向けて発言していた。
「そういえば覇剣って主に女性が正しい使い手となる事が多いのよね?ならなんでバルボアと相性が良かったんだろ?」
「……どうせあれだろ。相性と使い手は関係ない……という様なこじつけがあるんだろ。実際持ち手と呼ばれる男達もその覇剣を全く使えなかった訳じゃねーんだからよ。」
納得しにくいがそれで本人が満足ならそれで良いのだろうと思いながら大橋はため息をついてしまうのであった。