新ゲーテンベルド最初の戦 終戦-5
「……どの世界でも偽善者という者はいるんですね…。」
大橋はそう言いながらグラノアの父親について考えていた。平民と王族が恋をして上手く行く事などは少ないというのは日本でも似たような物だ。しかし日本では実力や努力でどうにかなるレベルの時もあり、迫害される事は比較的聞かない。しかし価値観の違い等で別れることも少なくないが基本的に偽善者が世話をするなんて事は無いだろう。
「保護するならキッチリと保護するべきだと思いますよ……。」
「そ、そうね。私達の世界でもそこまで酷くは無いと思うわ…。」
大橋はそう答えるがそこまで酷いのでは無く、そこまで行く前に心が折れて自殺するか、相手の興味が消え去る事が多い。その為にグラノアの様な事が起きないのである。
「まぁ、それでも中立な奴はいましたけどね。医者のカボーラとか布屋の娘のシェリニとか……この人達は味方では無く余り物を処分しようと私に接触してきてましたけどね。たまに腐りかけた食材に火を通して渡してくれたし。まぁ、その方達は……死んではいませんがここにいる訳でもありません。」
「……どういう事ですか?」
「布屋の娘は別の国に嫁ぎ、医者は龍騎士団のお抱えだったものの、クスリが足らないという理由で解雇されて故郷の国に帰りました。国の名前は忘れましたがそんなに離れていないでしょう。」
グラノアはそう言いながら自分の父親や異母兄妹達にやってきた復讐について話していた。彼女はそれだけ父親を、父親の創り出した偽善の国を目茶苦茶にしたのだ。まぁ、癇癪を起こす事すら許されないレベルで耐え続けなければならなかったのだ。その様に歪んでしまっても問題ないと感じられた。それは、暫くの間一部だけ彼女と同じ様な経験をした者と旅をしていたからだろう。
もっとも、彼女の父親はグラノアの父親と違い無能だった。彼は従者達を発言や行動だけで引っ張っていけるカリスマ性も、自分が1から事業を作り出す気力も無かった。ただ、少しだけ運が良かっただけなのだ。
「1番恨んでいるのは父ですが、1番気持ち悪かったのは龍騎士団の女ですね。あれだけ汚れた主従愛を私に塗りつけてくるのが非常に嫌でしたよ。」
「………確かに嫌よね。しかもそれが嫌っている父親なら……吐き気止まらなくなりそうね。」
そんな話をしているとクライアやバルボアも賛同していた。特にバルボアは自分がグラノアの父親と似たような立場になった事もあるので余計に話を中断させようとしたのだった。……まぁ、忘れられがちだがバルボアは山賊なのに顔は良い。その為一部の団員達は彼とヤれない事を同志達と慰め合っていた。その現場を目撃してしまった彼は暫くの間カモと言える馬車を何度か見逃していた苦い記憶があるのだった。