新ゲーテンベルド最初の戦 終戦-1
「……肉も無くなった訳やしそろそろ退散させてもらうわ。」
「……モキュモキュ……ゴクン!あぁ、そうですね。そろそろ退散しましょうか……。」
アベルがサクッと食事を終えたのに対してグドリャーフカは名残惜しそうにまだ焼けている肉を見ていた。しかしそれをグッと堪えた後、帰り支度を始めていた。タッパーが無いかと辺りを見回すもその間にテンレが肉を全て食べてしまったので流石に諦めたらしい。
「……しかしこよっちは普通に働いてくれたのは良いことや。変身アイテムとゲーム筐体と熟成肉のストックの一部を持ってったのはやりすぎかもしれへんけど。」
「裏切り者はやはり大橋か……まぁ、殆ど予想通りだな。」
「うわっ、信用無かったんか?」
「人質の取りやすさが1番だしな。カグラの場合は潜伏先で息が詰まる思いをするし、テンレやアルミナは人質にするべき相手がいない。いるとしても其奴らは軽々しく人質にはならないからな。」
「その予想普通に当たっとるわ。つか、この嬢ちゃんはなんで青筋浮かべとるんや?」
テンレが青筋が立てているのは恐らく肉を盗まれたからだろう。だが、それでも肉が使い捨てられるよりはマシだと考えたのか、アベルと対峙するのは無理だと悟ったのか、肉の調理方法のアドバイスをしていた。
「……熟成肉は早めに食うんじゃぞ。あれは下手すれば腐るからの……。今回は上等な肉を食えたから多めに見てやるわい。」
「またまた~。俺っちの方が強いから痛めつけられんやろ~。」
「…チッ。じゃが食いもんの恨みは恐ろしい事は知っておった方がえぇぞ若造が。」
「見た目も背も俺っちの方が大人やん!まぁ、中身は違うらしいんやけど。ただ、その忠告はありがたく受け取っとくわ……じゃあ、またの、厳坊。」
アベルがそう言って去った後、テンレが度肝を抜かれた様な顔をしていた。そして私に悲しそうな視線を向ける。その顔を見て私はアベルとテンレの間に何かがあったのだと感じたのだ。
「………剣城の嬢ちゃん……アイツは……アベルっちゅー男は転生する筈じゃった人間の人格を喰い、知識を得た奴と言っていたよな?」
「そうだ。実際にこの目で確認している。」
「……だとしたら、儂は闘えん。恐らくあの体……いや、アベルが喰らった魂は………儂の兄貴じゃ。いや、正確には従兄弟なんじゃが……儂に、肉の魅力を教えてくれた良い兄貴じゃった。そんな兄貴の魂が入った体に………刃を通す事はできん。」
テンレはそう言って涙を流していた。恐らく厳坊というのはテンレが前世で彼に呼ばれていた名前なのだろう。……まぁ、私も同じ様な状況になればテンレと同じ状態になるだろう。……つまり、テンレはここでアベル達との闘いからは半分リタイアする事が決定したのだった。