新ゲーテンベルド最初の戦 補給戦-2
セバスが無事を祈った相手であるアルは馬車から少し離れた場所で苦戦を強いられていた。変身しようにも何故かいつも訓練後に置いている場所に変身するためのアイテムが無く、予備を出そうとした所でそれも無かった為、素手で闘っていた。
アルは徒手空拳はあまり得意では無いため、必死に逃げていたがアベル四天王であるクライアとの闘いは厳しい物であり、既に戦闘不能となっているカグヤを庇いながら闘っているため、圧倒的不利な状況であった。
「……何が目的なんですか?」
「補給ですね。まぁ、食品の一部は既に持ち出し済みですので……最後に聖剣を頂こうと思いましてここにいます。」
「……まさか聖剣を狙ってくるとは思いませんでしたよ。それならばカグヤを気絶させた事にも納得がいきます。ですが私は付いていく気はありませんよ?」
アルはそう言いながらクライアの動きを警戒する。だが、クライアの言い放った言葉により状況は一気にひっくり返ったのだ。これに関してアルがカグヤを庇うことに集中していた事が問題だろうと思える流れと化していた。
「あっ、バルボアさん。そちらはもう終わったんですね。」
「……っ!まさか後ろか……ら……。」
アルはカグヤを庇う事に集中した結果、最悪の状況を常に想定していた。その最悪の状況とは自分が見えない所でカグヤが敵に襲われるというケースだ。この事に勘付いたクライアは同じアベル四天王の一員であるバルボアがアルの後ろにいるカグヤを襲おうとしていると言うような架空の状況を言葉1つで創り出していた。
「な……なんで……こんな……」
「相性に関しては……まぁ、生まれつきですかね?ですが性根は悪人……笑えますかね?」
「…笑える……訳……無いです……ね……。」
いもしない筈のバルボアを警戒して振り返ったアルの背中からクライアは〖聖剣アルーク〗を取り出していた。あまりにも軽く抜けた事、剣が抜けてから一気に力が無くなった事でアルはバタリと倒れてしまった。
「……さてと、これで目的は達成できましたね……。後は何を………っと忘れていました。」
クライアはそう言いながらアルとカグヤを馬車の中へと戻しに向かう。その中では気絶したハピピュア達が眠っており、気絶しているカグヤとアルもその近くにあったベッドに転がした。そしてベッドの近くで座っていた少女に声を掛ける。
「……もう盗り忘れは無いですよね?では行きましょうか……人質を取られたスパイさん?」
「分かってるわよ。まぁ、こうすれば親友とその家族を殺さないと約束してくれるならね。」
クライアにスパイと言われた大橋はクライアに連れられて他のアベル四天王と合流するのだった。何故、彼女が裏切ったのか……そしてハピピュア達が気絶している事に関しては…少し時を戻して説明する事にしよう。