新ゲーテンベルド最初の戦 補給戦-1
今回から暫くは三人称でお送り致します。
剣城達がアベルとグドリャーフカに一緒のBBQコンロをつつく事によって足止めされている間、セバス達と供に逃げた馬車の前にファイズを除いたアベル四天王のメンバーが立ちはだかっていた。最も彼等はまともに闘う意思は持っていなかった。
「……まぁ、今回はこれと……後これを取りに来ただけじゃからの。問題ないわい。」
アベル四天王のエルダードワーフであるマツリカはそう言いながらセバスの後ろにいたエリの元へと歩いていた。戦闘に関して警戒していたセバスはあまりにも日常的にマツリカが通り過ぎた為反応が遅れた。
「成るほど、これは儂と相性が良いらしい。ちと手の掛かる面妖な武器じゃが問題無いわな。」
「……何……を……。」
マツリカはセバスを軽々と通り過ぎた後、エリの胸元に腕を突き刺していた。そしてグリグリと中身をまさぐった後、エリの武器としてのコアであるエリアタールと名付けられたスナイパーライフルを引き出していた。それと同時にエリの人間としてのコアから聖気が流れ出し、スナイパーライフルの方へと吸収された。
「簡単な事じゃ。武器のコアと人間としてのコアを切り離したのじゃ。しかし、ここまでグドリャーフカの言う事が正しいと味方ながら怖くなってしまうわい。お主にとっては不服な事であろうが、武器と儂の相性は最高だったらしい。それは他の2人も同じじゃがな。」
マツリカはエリアタールを背中に抱えた後、人間体のコアしか無くなったエリをセバスに向けて投げつけた。それを反射的に受け止めたセバスはまたも自分の横を通り過ぎるマツリカを捕らえる事は出来なかった。
「……まぁ、お主は年を追う毎に強くなっていく。衰えるなんて事が無い人間じゃとよく分かる……それ故に【王魂の林檎】を食した王をあれほど容易く殺せたのじゃろう。それも魔法やスキルの恩恵等一切無い状況で……じゃ。じゃが、年の功と言うにはまだまだじゃの。まぁ、この世界に来ていきなり若返れば仕方あるまい。」
「……確かにその通りですな……。しかし、こんな事をして何になるのです?」
「こればっかりはアベルにしか分からん。彼奴は悪になろうとする理由を語らんからのぉ……。じゃが儂等が付いていくのはアベルと供におれば面白いことが起こる。じゃから脅威となるお主等から逆に物資を奪うこととしたわけじゃよ。」
マツリカがそう宣言した時、リガを守っていた東と呉実がライダーの姿のまま吹き飛ばされていた。2人が飛んできた場所をセバスが確認すると、そこには〖覇剣リガータルス〗らしき剣を片手に持つ元山賊のバルボアがエリと同じく武器のコアを取り出され人間体のコアだけになってしまったリガが軽く足で払われているところだった。
「マツリカ!この筐体も持って帰れば良いのか?」
「あぁ、そうしてくれ。レトロなゲームはやり込み要素が無くて暇なのじゃ。しかしクライアは遅いのぉ……。何しておるんじゃか分からんわい。」
2人が平然と話しているのを見てセバスはアルの無事を祈りながら警戒を最大限にして2人の様子を窺うのであった。