本質的には同じ羞恥心-3
〖魔獅子の肉〗に書かれている中毒性に関しての記述から時間経過が無く腐らないウエストポーチに入れており、テンレに全て出せと言われても出さなかった肉を軽く焼いてみた。まぁ、下味は付けなくとも問題ないだろうと思いながら焼いていると……テンレの体に変化が起こっていた。
だがその変化というのは私が〖王魂の林檎〗を流し込まれた時のように本来の姿に身長などが変化する訳では無かった。ただ、骨がベキベキと結合しているのかはたまた逆に折れているのかという音がしていた。
「美味そうな肉……美味そうな肉は……どこにあるんじゃ……。」
なんというか、雰囲気がゾンビになったテンレを見て私は安心よりも先に恐怖を感じていた。ただ、軽く焼いた肉を頬張った後、テンレは他の3人よりもピンピンしていたのだった。いや、どれだけ美味い肉に執念を……と思ったがよくよく考えるとテンレの飢えについても分かってくる。
テンレは転生してから25年経つまでこの世界で一口も肉を食っていなかった。そして現在はそこそこ肉を食べているが流石に〖魔獅子の肉〗の誘惑に耐えきれる程の耐性は付いていなかったのだろう。テンレは私に残っている肉を全部出せと言い、そのまま調理道具を出して調理し始めたのだった。その様子を見て私は「テンレの肉への執念は全身粉砕骨折並の重症もほんの一瞬で回復させる程なのか……」と呟いてしまうのだった。
「………まぁ、またいつか喰える日が来るから深く求める事は無いんじゃが……何故お主がそこにおるんじゃ?」
「確かにな。何しに戻ってきたのか分からないんだが。」
私とテンレはそう言いながら対面に座って肉を食べているアベルとグドリャーフカを見る。この2人がなぜここにいるのか、ここで何事も無かったかのように食事を供にしているのかが分からないのだった。
「いやいや一応フカっちがつるっちがどんな覚醒したのか見ておきたいってゆーたんや。丁度氷の城にも色々あった訳やしここまで戻ってきたら……美味そうな肉食ってるのが見えたんや。だからそのまま食べさせて貰ってる訳や。」
「……それに……ハグハグ……足止めにも……ハグハグ……なりますからね……ハグハグ……。」
「そーそー、補給には意外と時間が掛かるんや~。」
まぁ、足止めされているのは事実なんだよな……。この2人とテンレが満足するまでこの状態を続けなければ今度こそ私達の誰かが死んでいる。ガンダレスが見せたアベルに殺された仲間の死体は心臓を貫かれた物だった事から手加減されていた事を深く理解しているという事もあるが。
「…そろそろ腹一杯やし補給も終わった頃や。やから戻るけど……次に会う時はいつになるか分からんわ。ただ街道は整備しとくから闘いたく無いときは不戦と書いてる街道通るんやで~。」
「そうさせて貰うよ。暫くオマエ等とは闘いたくないからな。」
そう言っている傍から焼きたてホヤホヤの肉の取り合いをしているので説得力皆無だろうなと思いながら肉を食べ続けるのだった。勿論、生きている心地はしないのだけど。