新ゲーテンベルド最初の戦 前哨戦-4
「………やっぱこうでもしないと本気で殺しに来そうに無いやん。だからつるっちは殺さずに周りの大切な人間達を凍らせたっちゅーわけ。まぁ、擦っただけなのは幸運やね。ダレっちの時の……ルテっち?には心臓に直撃やからなぁ……。」
アベルはそう笑いながら私の後ろにいた4人を見る。その瞳には氷漬けとなって動かなくなってしまったアルミナ、黒姫、ランタン、テンレの姿があった。ただ、【鑑定】した所まだ死んではいないので一応安心はする。しかしこのままの状態で放置は出来ない為、今すぐ何かしらの処置は行わなければならないだろう。
だが、その処置する時間をアベルが与えてくれるとは思えない。少なくともアベルを退けておかなければ溶かせた後にすぐに氷漬けとかやってきそうだからだ。いや、絶対にやるだろうと思う。
「まぁ、つるっちはこのまま闘うのがお望みかいな。まぁ、擦っただけなら死んではいないっちゅーかその内溶けるレベルやしなぁ……。ただ、全員化け物かっちゅーとこやけど。」
「……確かにコイツ等は強いからな……。だが、氷漬けにした事を許すつもりはサラサラ無い。私の力不足に対する鬱憤も合わせてぶん殴らせて貰うぞ!」
「そんな事なら付き合わせて貰うわ。つるっちも凍る可能性有るけど問題無いやろ。時間経過で溶けるやろうし。」
アベルはそう言いながら地面に向かって氷の矢を放つ。すると私の周りの温度が急激に下がっていった。だが、その直後……私は何が起きたのかが分からなかった。ただ一言だけ言えるのは「いつの間にか氷の城の中にいた。」だけである。城の中には先程よりも厳重に凍らされたアルミナ、黒姫、ランタン、テンレがいた。
「まぁこのくらいはヨユーやね。記憶の中にある奴で言えば万里の長城やらでも充分ヨユーで作れるんやけど……アレなんで作られたか知っとる?それは知識として付与されてないねん。」
「私も詳しくは知らないが防衛線みたいな物だろ……って、まさか今からそれ作る気は無いだろうな!?」
キッチリと前世を食い尽くして奪った記憶を生かしているアベルに向かって叫んだ私は、アベルにあきれ顔で「せんわ、めんどいし」という言葉をぶつけられた。ただ、やろうと思えばすぐ出来るとなると………ガンダレスと対峙した時のような実力の差を感じてしまう。
「じゃあ、俺っちはそろそろ帰るわ。なんかフカっちは「これで充分悪役です」と言ってた訳やし。ただ、自覚しとらんようやけけん教えとこっか?こーゆーの悪役から教えられて初めて知るってのがテンプレな訳やし。」
「何を教える……だって?」
「そりゃー、持ちの論で【王魂の林檎】の第二段階についてや。いや、第三段階かもしれんわ。ちょっと待ちぃ。少し頭ん中整理しちょくから。」
アベルの言葉を聞いて私はなぜか予言の中の1つを思い出していた。ただ、それとこれからの話がかみ合えるのかが分からないまま、私はアベルの話に耳を傾けるのだった。