新ゲーテンベルド最初の戦 前哨戦-2
「あの馬車に乗っているのは黒組のメンバーだけである事は確認出来たのじゃ。何やら面妖な装いをしておる者もおるが多分新入りじゃな。ファイズよ、このまま突っ込まれるのも癪じゃからの……ちとゴーレム達を借りて良いかの?」
『問題ありません。』
「なら爆弾積ませて自爆特攻じゃの。まぁ、あくまで目眩ましにしかしないがの。あれだけ潰しがいのある奴は放って置けんのじゃ。」
どこかでそんな会話をしている様に聞こえたが、多分空耳だろうと思いつつ私は迎撃の準備を開始する。ただ、いつも多人数を一気に殺す方法として使っていた【獣達の回旋曲】は悪手だろうと思える。とゆーかアレは自分の手を汚さない為に創り出した技であるので殲滅力は期待しない方が良いだろう。
「となると迎撃に使うべきなのは……シンプルな【アンサンブル】の方が良いのか……。いや、【殺戮帝】になっておいた方が良いのは事実だろうけどな……。」
私はそう言いながら【殺戮帝】を発動して敵の一手を待った。すると相手はこちらから攻めてこない事で痺れを切らしたのか、軍人らしき者達を大量にこちらに向かわせてきていたのだった。
「………【アンサンブル】。」
私の放った【殺戮魔法】の基本技と言える【アンサンブル】はこちらに向かってきていた軍団をあっさりと砕いていた。……まぁこの【殺戮魔法】は土人形の様な魂の無い物にも通用する為、こちらに向かってきていた軍団は自分達の正体がゴーレムであると宣言するかのように土塊に姿を変えながら倒れていくのであった。
「……テンレ、アルミナ、黒姫とランタンはこのまま前進する。セバスは残りのメンバーを連れてここから離脱しろ!迎撃はエリとアルに任せる!」
「了解しました、お嬢様。」
私は外にいた黒姫とランタンの下へと飛び降り、テンレとアルミナも降りてきた。まぁ、今回の目的は殲滅では無く足止めと定めておこうと考えてしまう。最悪の場合は私以外の全員をスマホを使ってどこか安全な場所へと避難させた方が良いだろうと思える。
………だが、あの予言の事がちらついたのだ。裏切り者の誕生というあの言葉が。ただ、確実に裏切り者にならないと言い切れる人間は案外多かったように感じる。その為逆に裏切り者になるだろうと確信できる者がいなかった為、裏切らないと確信できるセバスが周りに被害を出さずに倒せる者だけをピックアップして馬車の中に残したのだ。
ただこの判断は対裏切り者に関しては優位に働いたが、それ以上の被害を出してしまう結果となった事を知るのはもう少し先の話であると私は気付かないのであった。