番外編 エルダードワーフの予言書
「………アベルと旅をしている頃から退屈しない毎日じゃったからすっかり忘れておったが……アレの確認でもしておこうかの。前の長が死ぬ前の様な違和感は無いのじゃが、気になるしの。」
マツリカはそう言いながらエルダードワーフの長に代々伝わりし予言書を取り出した。その予言書はエルダードワーフの里が滅んでからも機能しているが、マツリカ以外のエルダードワーフの里の生き残りがいなかった為、マツリカに関わる予言しか乗っていなかった。
「………なんと、本来死ぬはずの日が書かれたページが無くなっておる。これはどういう事かは分からんが……まぁ、アレを解析したからじゃろうな。」
マツリカがそう言うのはファイズから渡されたとあるファイルである。その中には聖剣アルークに関する情報があり、鍛冶と爆発を愛するマツリカには非常に興味深いデータだった。ただ、マツリカはそれを理解するのに10日も費やしていた。
「やはり年は取りたくないもんじゃの。どうにも衰えてばかりの機能が多くてたまらんわ。しかし10日だけというのは幸運じゃったの。下手をすれば日では無く年単位で理解するレベルじゃったからの。」
コロンと寝転んだ後にお気に入りのジャンクフードであるオニオンリングを摘まみながらマツリカはある事を考えていた。マツリカはエルダードワーフらしく鍛冶もするが基本的には爆薬が専門である。その為鍛冶に関してはうろ覚えな部分もあり解析に時間が掛かったのだった。
「まぁ、この予言書の効力は民が多ければ多いほどより鮮明となるが……逆に1人になってしまった時には大雑把な事しか書かれんからの……。じゃがそれが逆に楽しみとなっておるのじゃがな。」
マツリカはアベルが来る日に関しての予言書に書いてあった事を思い出していた。その内容はマツリカだけ『屈辱と興奮』、残りの民は『明確な死』となっていた。これはどう足掻いたとしても覆せない物であったものの、マツリカの好奇心を搔き立てていた事に代わりは無い。
ただ、今回のマツリカに対する予言は『黒組と戦』という僅かな文字だけだった。それがいつ頃となるのか、想定外な事がどれだけ起こるのか……そんな事を想像しながらマツリカは恍惚の表情を浮かべていた。
「……最悪、ここで死ぬ可能性もあれば他の四天王の誰かが死ぬ事もあるじゃろう。じゃが面白くなってくるのぅ。やはり長生きはするもんじゃ。」
マツリカはそう言いながら勢い良く予言書を閉じた。その光景をコッソリ見ていたグドリャーフカは面白くなりそうだと言うような目をしながらゲームをしようと誘いに行くのであった。