番外編 ファイズの日常-2
孤独になったファイズが最初に行ったのは戦闘システムの強化だった。誰にも評価されなかった製造主の死は大々的に伝えられなかったが、ファイズを危険分子として見る存在がいる可能性は高いと判断していた。
故にファイズは最初に行ったのが最後に埋め込まれた戦闘プログラムの強化だった。製造主との話の中に出てきた狼や下手くそな絵の中で知ったモンスター達を作り上げては動かし、新たな命を吹き込む訓練を続けた。
そんなファイズはその内自力で人工知能として自立出来る様な準備を開始した。これは製造主の持っていた知識を取り込んだ事から始まっている。しかし製造主は自ら自分の取り込まれていた人格だけをデリートした。一緒にいて楽しいと言っていた製造主は逆に一緒にいたいからこそ辛い思いはしたくないとデリートしたのだ。
この事からファイズは卑怯者を許さなくなった。戦闘プログラムと自身の強化を着実に進め、千年間の間に幾多もの侵入者を殺してきた。殺した死体を処理する度に彼女は虚しさを感じていた。話し相手となる程の知識も無ければファイズの作る土人形を突破出来る強さも無い……そう思うと供に生きる者が見つかるとは思えなかった。
だからこそファイズは暇つぶしと称して戦闘プログラムから作り出した土人形を強化したり色々と実験をしていた。強さを求める研究は終わりが無いに等しいためか退屈な時間は終わらなかった。ただ、退屈は紛れても虚しい孤独感を抑える事は出来なかったのである。
そんなある日、土人形を全滅させて現れた集団がいた。アベルと名乗る青年は土人形を圧倒し、グドリャーフカと名乗る女性の持つ知識量にも驚いていた。そしてアベル四天王に加わったファイズは………現在、レトロゲームに嵌まっていた。
アバターという概念を理解した彼女は製造者の知識を使い約30年掛けて作り上げた予備サーバーのゴーレムをより人間に近い形にして楽しんでいた。特に気に入っているのがシューティングゲームであり、たまに縛りを設けて色々とやっていた。
「……ファイズよ、こんなショボい爆発で問題ないのか?」
『えぇ、問題ありません。この様な雑魚を殺したときの爆発が一々大きかったらコストが嵩みます。』
「そうじゃな……。まぁ、爆発シーンに不満があればいつでも呼ぶと良い。一応その筐体を改造する事くらいなら片手間でも充分出来るからの。」
マツリカがたまに話してくる事もまた楽しみの1つだと感じながらはファイズはレトロゲームを楽しみつつ、これが自分よりも遙かに少ない容量とハードで出来ている事に驚愕するのであった。