番外編 天界の脅威-5
数時間後、ボロボロになりながらも2人は夕日を見上げながら笑い合っていた。それをジトーッとした目で見ているのはタマである。彼女は2人が殴り合った事で作られたクレーターを修復している最中なので、無駄な苦労をさせられていると感じているのだった。
「……まったく、この2人はいつになれば喧嘩で手加減を覚えるんでしょう。」
タマはそう言いながらラクマナの事を追うために準備を開始することを決意していたのだった。ただ、それがいつになるかなどは考えていなかった。タマ自身も長命なのだが、武器である彼女よりは短命である事は間違いないのだ。
「まぁ、今回は色々と問題があったようですしね……。」
タマはそう言いながら空を見上げていた。ただ、そこには平和な空が浮かんでいるだけである事から安堵する。しかし……夕日がある影により少しだけ欠けた事から嫌な予感を感じていた。
「……アーチホインの仇は誰なの?」
「さぁ?私には分かりませんわ。別の方に聞くことをオススメします。まぁ、私達では無いことは確かですが。」
「うるさい。アーチホインは私のお婿さんになる奴だった。彼を殺されて黙っている訳にはいかない。」
そう言いながら天界から降りてきたのはゼゼフラントでは無かった。彼女の名前はクルフホーラ。アーチホインとは幼馴染であり、彼を兄のように慕っていた少女であった。ただ、そんな話を聞いてタマは彼女の嗅覚を疑った。なんせ彼女達を指揮していたギンガですらその臭いにより一歩引いた程の足の臭さを持っていたのだ。そんな彼を慕い続ける事ができる天使達はどうなっているんだ?と感じていた。
だが、クルフホーラは足の臭いに関しては愛の力で克服したと発言している。その言葉を聞いたのはアーチホインを殺した張本人であるシェリシェルなのだが、同意することは無かった。
「……まぁ、気になるならばそこにいる方々に聞いてくださいまし。もっとも、今の2人に横槍を入れるのはオススメしませんけど。」
「……そんな事関係ない。私はアーチホインを殺した奴に復讐しなければならないの。そうすればアーチホインの魂は私の元に来てくれる筈だから……。」
まさに、恋は盲目と言わんばかりの視線を向けたクルフホーラは自身の武器である〖聖拳シレルヘイベン〗を装着して臨戦態勢を取る。その姿を見てタマはため息を付きながらゴロンと寝転んだ。先程まで2人の喧嘩によって起こる衝撃波による被害を最小限に抑える目的で魔力を使いまくり、さらにクレーターを元に戻す事も追加された場合、魔力切れに近い状態なのである。
しかしクルフホーラはそんな事をまるでそんな事を気にせずに拳をタマへと向けたのであった。