番外編 天界の脅威-1
「大丈夫よ。天界の者が殺される様な脅威なんて早々無いんだから。【ウィザードラン】や【マスターローチ】の群れが出て戦争になったのが何百年も前の話なのよ?」
「そうですが……ただ、無限ダンジョンからあぶれたモンスターが出てきたりしますからね……人間だけでは到底適わないモンスターを相手にする事もあると思うんです。」
「そうねぇ。まぁ、噂だけど天使長クラスの者が瞬殺されたなんて話もあるくらいだし、用心に越した事は無いと思うわ。」
「……という訳で、私は暫く鍛錬に励みますので……。」
「分かったわ。国境なんかは私に任せて。今回の様に殺されても構わない様なアーチホインなら問題ないけれど、アタイの妹分を殺されたらシェリちゃんを嬲り殺す自信があるわ。」
その時の殺気は本物だった為、シェリシェルはより青ざめた顔をしていた。それを察したリザベスは「いけないいけない」と殺気を鎮めてからお茶目にてへっとポーズをした。しかし、筋肉ムキムキなリザベスがそれをやるとどうしても異常に見えてしまい、シェリシェルは無理して苦笑いをするのだった。
「……しかしその瞬殺された天使長が持っていた〖聖剣アルーク〗を鍛冶場で見かけたって話もあるんですよね……。少なくとも死んだ事は間違いないと思います。」
「あぁ、友人情報って奴よね……。それくらいならアタイのコミュニティでも話題になってるわ。でも前よりも生き生きしているらしいと言われてたわね。」
聖剣アルークは第3天使長の背骨として何百年も過ごしてきた為、解放感でそう見えるのはおかしくない。というかあの状態を見て第3天使長が死んで悲しいと思っていると見る者の方が異常に見えるのである。
「……しかし、天使を瞬殺出来る者はまだ生きてましたっけ?」
「人間で天使に挑んだ者で強かった人は………口伝で伝えられている〖王魂の林檎〗を食した者ばかりよね?だから有り得ないことは無いけど……。」
二人はそう悩んでいたが天使三人を瞬殺した剣城は当時まだ〖王魂の林檎〗を食しておらず、第3天使長を瞬殺したランタンは完全に〖王魂の林檎〗と関わりの無い者だった。ただ、第3天使長が瞬殺されたのは悪さばかりする孫達に聖力を与え続けていた事による弱体化が主な原因である。そして、弱体化をしている事を自覚していなかった事もあり、第3天使長は瞬殺された。
「……まぁ、ついでに何か予兆が出ていないかとか、人間の中に強い者が来ていないかも調べておくわ。」
「……任せましたよ。それともしもの事があれば救援に来て貰えると助かります。」
その後二人は無限ダンジョンまで連れていけと話すラクマナとシャードラの我が儘に関してどうするべきか?と悩むのだった。