番外編 シェリシェルさんの苦悩-1
「…天啓も無く開拓を続けるのって結構大変ですよ……。まぁ、あそこ何も無いと言う割にはちゃんと天気という概念があるくらい雨や雪が降りますから問題ないですけど……取り敢えず国境辺りを確認してみましょうか。」
天使長シェリシェルはこの地で産まれたタイプの天使である。その為優秀な天使の枠に入っている為か、面倒事を押しつけられる事が多かった。ただ、今回の学園転移に関しては殆どノータッチを貫こうとしていた…が、アランカルが周りの事を放置する為、泣く泣く地上へと降臨するのだった。
「……翼は……収納しておいて、代わりに頭にエクステを2つ付けときますか。そうすればいざという時に空に逃げる事が出来ますからね……。ただ、ここではあちらの様な凶悪な奴がいないからどうにかなっているんですよ……。」
シェリシェルが言っているのはアベル達の事である。その他にも明確に悪と呼べる者達がいる事を彼女は友人の天使から聞いている。ただこれはお互い仕事を押しつけられた事により産まれた友情のために深い仲とは言えない為、お互いが情報収集にしか利用していないのが現状である。
「……最果ての土地ではありますが悪党はいませんしね……というか、悪党もここを拠点にしたくないと言うのが本音な訳で……。だけど無限ダンジョンを設置したら……感付く奴もいる訳だよ。ねぇ、アーチホイン。」
「なんだ、気付いていたのか。まぁ、最初は人間共を扇動してダンジョン奪おうと思ってたんだけどなぁ~。」
「……止めてくださいよ。貴方方は酒や煙草、香辛料が充実してるじゃないですか。それで満足していてくださいよ。」
正統派イケメンの様な顔をしつつもチャラそうな雰囲気を醸し出しているアーチホインはアランカルの統治している地域の隣を統治する男性天使長である。彼は非常に強欲な性格で有り、10個の無限ダンジョンと大量の若い女を手に入れようと単身で国境近くに現れたのである。
「……ウチの大天使長様は頭固くって硬くってさぁ、転移とか転生許してくれないんだよ。だからお零れ貰うくらい良いだろ~?」
「よくありませんね。さっさと帰るかこの場で自害するか、堕天してください。」
「堕天はしたくないなぁ。ちゃんと誠実に扱うからさぁ……って、なんで武器を構えてるのかな?」
「いえいえ、貴方を消滅させる理由を貰ったのでサクッとやってしまおうと思いまして……正直に言えば八つ当たり、またの名を憂さ晴らしです。」
シェリシェルはそう言いながらこれまでの辛い仕事をウザい男を消滅させる事で忘れ去ろうとするのだった。もっとも、このままアーチホインを進ませれば碌な事にならず、自分の仕事が増える事が分かりきっている為、より張り切ってアーチホイン討伐の為に笑顔を見せるのであった。