暇つぶしシンドローム Ⅰ -2
阿酒理君を気遣った強盗犯は一旦カメラにトイレから離れるように指示を出した後、阿酒理君が脱出しないかを確認していました。強盗犯の優しさに阿酒理君は少しだけ笑いながら受け入れていたのでした。
一方その頃、強盗犯の1人が料理をする為にキッチンへと向かいました。これまでは間取りが狭く、冷蔵庫を開けるとガスコンロが使えないほど狭かったのが………なんという事でしょう。収納スペースが沢山ある事で、家族4人が一緒に行動しても問題が無いほど広々とした空間となったではありませんか。撮影スタッフが当時の狭さを語ると強盗犯も驚いており、彼女はライフルを背負いながらミートソース缶の中身をフライパンに出してから温め始めました。これまでガスコンロだったのがIHに変わっている為、ライフルに引火する危険もありません。
「まず論点が違うと思うんだけどな~。」
「その辺りはもう気にしたら負けだと思う。」
しかし、我々にも救いの手が。運良く拉致されなかった新人ディレクターが警察にコッソリと連絡していたのです。この事実に気付いた我々は、強盗達に気付かれないようにしようとしたその時、強盗犯がリビングのテレビを付け始めました。阿酒理君は〖盆栽テレビ君〗を見ようと必死に言ったのも束の間、大画面かつ高画質なテレビは、これまでのブラウン管のテレビとは違い、秘密の裏口から警察が入ってこようとしているニュースがバッチリと移っていました。
激昂した強盗犯は我々スタッフや依頼人夫婦に強盗していた時の黒装束を着せ、自分達は収納スペースにあった服に着替えました。そして、弾を抜いた銃を渡した後、怯えた演技を始めました。お爺さんはお婆さんと共犯でしていた事が数多くあった為に警察に助けを求められず、阿酒理君は首を折ると脅迫された為、何も言えず、警察達が侵入してくるのを許してしまいました。
結果的に強盗犯の演技が神がかっており、依頼人夫婦とスタッフ二名が捕まってしまいました。ここで新人ディレクターが気付けば良かった事が……なんという事でしょう。初めての通報で緊張していた新人ディレクターは失禁し、既にその場にいなかったではありませんか。こうなってしまえば冤罪は完全に成立してしまいます。
「………いやこの番組で万事解決でしょ。」
「多分内容的にお蔵入り。」
まぁ、この後の展開が思いつかなかったのでそのまま予算やら強盗犯の稼ぎなどについてを解説して私の作品の発表は終了した。最初からツッコミ所満載だったと言われるが、これを本来のBGMと供にやられたらかなりシュールになってしまうのでは?と感じてしまう私なのだった。