番外編 アベルと四天王は悪と認識されました
それから数日後、アベル達が滅ぼしたゲーテンベルド王国の領土を欲しがった他の国々の使者がアベル達に殺到した。しかし、アベル達は領土をタダ同然の条件で交換しようと交渉しに来た国々の使者達を次々と追い返していた。中には良識ある使者もいたが、それは単純に差し出せる物が無い小国であった為だった事から良い返事を貰うことは出来なかった。
だが彼等は別にゲーテンベルド王国の領土だけを狙ってはいなかった。現に使者だけしか送っていない国の殆どはゲーテンベルド王国があった事で保たれていた均衡を崩すかの様に隣接する国同士でも戦を始めたのだ。
ただ、使者達もゲーテンベルド王国の領土が欲しいと何度も訴える。だが、提示される物が、均衡が崩れてしまった結果いつ滅びるか分からない国の爵位だとすれば仕方の無い事だろう。だが、使者達はそんな事を言わずにと何度も何度もアベルに話しかけた。だが、いつまでも首を縦に振らない彼を見て、使者達は憤慨して襲いかかってきた。
武力行使で脅せば交渉くらい朝飯前だと言わんばかりに使者達は各々武器を構えてアベルに詰め寄っていた。自分の国の王は【王魂の林檎】を喰った事があるとかそんな事を自慢する者達もいた。だが、アベルにはそんな脅しや自慢話等は全く持って意味が無い。
アベルは自分の【王魂の林檎】を既に手にしているのだから使者達の話に何の興味も向けない事に加え、彼等がどう足掻いても倒せなかったゲーテンベルド王国の軍や冒険者達を数人で殲滅した者達に向けた脅し等、全く持って意味が無い。そんな事を考えもしない使者達はアベルに襲いかかったと同時に死の感触を味わった。
……というのもある使者は心臓を握りつぶされる様な感触を覚え、ある者は自分の鼓膜が破裂した感覚により倒れた。またある使者達は首筋に刃を当てられ、ある使者は暗い土の箱の中へと閉じ込められた。そして最後に残った使者はというと……四肢を氷の矢で突き刺されて動けなくなっていた。
「……あ、すみません。遅れてしまいました。すみませ~ん、アポイントを取っていた黒丸新聞の者ですが……っと、凄いですね~。まさに悪の権化ですよ、この図は!早速記録させて貰いましょう!あっ、この事を公表してもいーですか~?」
「勿論。ただし悪者である事をしっかりとしてくださいね。
「分かりました~。ただ、使者達の交渉事だけは改ざんしますね~。そうすればより悪人として見られるでしょうし、真実を書くとどちらが悪人か分からなくなりますからね~。」
黒丸新聞からの使者はそう笑いながら下書きの写しをグドリャーフカへと渡して去って行った。そこにはアベル達がしっかりと悪人である事が書かれていた。ただ、後ろには『黒丸新聞の信用の為、しっかりと悪人として今後も報道させて貰いますね。』とメモがあり、グドリャーフカへはクスリと笑ったのであった。