番外編 アベル四天王の解説-2
「……バブリア君もグラノアさんも、喧嘩はよしてよ。これからの事について話しあう必要があるんだからさ。」
「あぁん?優男は黙ってろ!」
「……そーゆーのえぇから。しかしイアっちが仲間になると宣言した時は驚いたわ。なんせイアっちの幼馴染や婚約者もまとめて殺してんやからな。」
「……まぁ、死んでしまい残念とは思いますが……僕としてはどちらも不本意な関係でしたので段々とどうでも良くなっていました。しかし墓を作るのは大変なのだと今回の事で知りましたよ。」
そう告げたのは龍騎士団を殺し尽くした誠実そうな青年、クライア・リッキーマだった。彼はとある巨大な領土を持つ神聖ミセプラーナス帝国の東端、ムーンイースト辺境伯領を防衛する【月明の騎士団】の若き騎士団長であり、辺境伯の末っ子である婚約者や帝都騎士団長の血筋のある幼馴染がいた。
だがそんな彼はある日降り注いだ矢の如く鋭い雹により自分の部下を全て失った。そして、賊の長であったバブリアにより主であった辺境伯を殺され、婚約者の生首をポイと投げつけられた。だが、クライアはにこやかな笑みで降伏した後、アベルの事を悪人と言いながら仲間になると誓ったのだ。
「……意外と悪人らしく生きるのが様になっている気がしますね。口調などはあまり変えられませんが……多分僕は、騎士団の様に正義を貫くよりも、徴税官の様に悪人のように振る舞う方が様になっていたのだと思います。」
クライアは仲間になってから残りのメンバーを勧誘する際にそのような発言をしていた。それ程までに彼は正義という物と相性が悪かったのかも知れない。そう思えるほど彼は騎士団長をしていた頃よりもさわやかな笑顔をしながら生き生きとしているのだ。
ただ、彼がなぜ幼馴染や婚約者を疎ましく思っていたのかと言えば……彼等は弱かった。そして、権力に縋ろうと必死だったと言えよう。実際辺境伯の末っ子である娘はどう足掻いても実家の恩恵を受けることが出来ない。それに加えて婚約者となっていた者は何か秀でた才があるわけでは無かった。……というか、ただ誰かの脛を囓って生きようとする姿勢だけが立派であり、厄介払いとして辺境伯が押しつけた様な物だ。
幼馴染も大概似たような者であった事から、クライアは本来ならば亡くなって悲しむ筈の幼馴染や婚約者が殺されたのを見て、逆に喜びの感情がわき上がってきたと話すのであった。その話を聞いて少し自分と似ているかも知れないとグラノアは思うのだった。まぁ、名前が既に似通った名前である事についてはスルーしておくことにしよう。