番外編 アベル四天王の解説-1
さて、ゲーテンベルト王国を滅ぼした者達を率いていた人物は誰なのか?というとアベル・ヘルレーガンという快楽主義者と言える男だった。彼は転生してきた魂を逆に食い殺す程の精神力を赤ん坊の頃から既に持ち合わせていた魔王と魔王の息子である。そんな彼はグドリャーフカという者を秘書という形で連れて四天王捜しの旅へと出かけていた。
そんな彼が最初に出会ったのは、後にゲーテンベルト王国にいた冒険者達を皆殺しにするデアンバルテ山賊団の長、バルボア・バルデッドだった。アベルは出会った当初から彼をリアっちと呼んでいたが、最初から友好的な関係を築いていた訳では無い。彼が仲間となった理由は彼の率いていた山賊団がアベルによって呆気なく殺されてしまったからだろう。
その光景を見せつけられたバルボアという男は、仲間にならないかと手を伸ばすアベルの手を取った。彼は山賊王から四天王の一角として生まれ変わったのだ。もっとも、彼が了承した後暫くはアベルに奇襲を仕掛けて殺そうとしていた。だがアベルはそれを全て躱し、自爆を考えたバルボアも止めたのだ。
そして今では四天王としてアベルと供にいる事を誇り……とまでは行かないが良い事であると考えていると話している。まぁ、たまに色々と喧嘩を始めるらしいが、四天王となるべき人材を見据えるグドリャーフカはそれこそ悪の組織の四天王だと語っている。
彼が使う武器は主に大きくそり曲がった剣であり、一振りで最大八人ほどの首をまとめて切り落としたと言える程の剛力を持つ。ただ、冒険者達を皆殺しにする時には1人ずつ丁寧に切り落としていた。変な所で几帳面さを出す男……それがバルボアという男だった。
彼の服装は山賊の王らしく毛皮で出来た目の粗いコートを着て下は麻で出来た短パンである。これは冬場でも同じらしく、アベルが氷の矢を使った時に寒がるのが特徴なのだ。まぁ、最近は湯たんぽを自分で作っているので何も問題が無い事になっているのである。
「………何というか、顔が良いのに山賊ってのが非常に残念になりそうですね。」
「何を言うか。お前こそ傷さえ治せばそれなりの女子にはなるだろう。俺は育った環境が違うんだよ。回り皆男ばかり、襲う村も女はとっとと逃げだしていき……まともな恋愛すらした事は無いな。そのせいか食欲ばかりに気が向いてしまう。」
とても山賊の長とは思えない程恋愛やら女に対する欲の無い男、それがバルボアという男なのである。




