番外編 旧ゲーテンベルド王国-2
フラウスは自分がやられる拷問は軽い物だと考えていた。精々背中を鞭で叩かれるとかいう甘っちょろいものしか出来ないと考えていた。この娘がどれだけ自分を憎んでいようと、平和を創り出していた自分に拷問など恐れ多くてとても出来ないと本気で思っていた。だからこそ、自分の身体が死んだにも関わらず魂を繋ぎ止められた事に驚愕していた。
死んだ身体に魂を繋ぎ止められた時、その身体が受けた痛みは全て魂にも反映される。そしてその痛みはいつまでも残り続けるのだ。死んだら解放される拷問も、既に死んでいるために逃げ出すことが出来ないまま、フラウスは自分の娘であるグラノアが優しくしてくれる事を祈った。しかし、グラノアはそんな事は微塵も考えていなかった。
最初にグラノアが行ったのは爪を剥ぐ事だった。爪と皮膚の間に針をねじ込んだ後、ぐりぐりと隙間を広げていく。その時に肌に触れる針の痛みフラウスは何度も何度も辞めてくれと懇願した。痛い痛いと何度も叫び続けた。しかしグラノアはそれを辞める事は無い。ただ職人の様な手つきでは無く、試行錯誤を繰り返す子供の様な形で剥がされていた事もあり、爪1枚を剥ぐのに軽く20分くらいは掛かっていた。
だが、剥がれた爪はそのままフラウスの口の中に入れられた。爪のなんとも言えない味や臭い、それとベッタリと付いた自分の血の味に加え、その爪が魚の骨のように自分の喉に突き刺さった事から、より気持ち悪さをフラウスに与えていた。ただこれは両手両脚の爪が全て剥がされるまで続いた。沢山の爪を口の中に含んだ感触がいつまでも残っており、吐きたくても魂だけの身体では何も吐き出せなかった。
その後、グラノアは王妃の履いていたハイヒールを手に取ると、フラウスの睾丸に向けて突き刺した。その痛みに悶絶するフラウスだがハイヒールのヒール部分をぐりぐりと動かされ、自分の中の男が壊されていくのを感じていた。だが、この痛みはいつまで経っても引くことは無い。魂の身体にそのまま残ってしまうのだ。
「………まだまだですよ。貴方はこれ以上の苦しみを味合わなくてはなりません。真に偽善の王を名乗るならば、最初の罪を犯す前に死んでいて貰った方が讃えられましたよ。」
グラノアはそう言いながらある液体をフラシアの男の象徴に向けて掛けた。その液体はフラシアの男の象徴であるそれをじわじわと溶かしていった。かつて愛した女と瓜二つの彼女から狂った笑みを向けられるのを見て、フラシアは心が折れていた。だが、折れただけで拷問が終わるはずも無く、フラシアはまた新たな道具を使い始めるグラノアを見て、やめてくれと何度も叫ぶのだった。