道中閑話 ~ダイトマン公爵領にて 前編~
「………嫌な、事件だったね………。」
「そうだな。これは嫌な事件だった……が、これで全てが終わるな。だが良かったのか?公爵という立場を捨てる事は。」
「別に良いんですよ……。国王様に麻薬を届けなかっただけマシですから。下手すると私は死んでいましたから、現状には満足しています。」
そう言いながらダイトマン公爵の長男、ヘルマンセ・ダイトマンは清々しい笑顔でそう言った。例え自分の父親が誇る領地が凍り付いていたとしても……だ。ただ、領民達も一部を除いて凍り付いている……が、しかしその姿を見て怯えている領民はいない。凍り付いた領民はダイトマン公爵の悪事に協力し、他の領民を苦しめていたのだからそうなっても仕方の無いことなのだろう。
「……なら一気に燃やしてしまおうか。少なくとも灰が漂う事は無いだろうしな……。」
私はそう言いながら氷の中に【獄炎魔法】を発生させた。この麻薬の原料となる草……ダイマーは灰にする事で麻薬となる。その為灰すら残さぬ獄炎を使う必要があった。だが、こうなるまでの経緯は面倒なので箇条書きにしてみようと思う。
1.公爵領到着した時に漂う灰が異常な事が分かった為、耐性のついたアクセサリーを付けて私とランタン、黒姫と呉実の4人で公爵領へ。馬車はセバスに頼んで待機させた。
2.公爵領内で栽培されている物の殆どがダイマーという麻薬の材料であると判明した後、ダイトマン公爵が屋敷へ招待してきた。怪しすぎるので様子見をしていると案の定口封じしようとしてきたので黒姫の催眠術で悪事を全て話させた。
3.それを偶然聞いていたのは公爵の家族だった。ただ催眠で全てを話した公爵の言葉を真実と言ったのは公爵の長男のヘルマンセのみで、残りの子供(男3人女4人)は私達が嘘を言っている、この公爵領を奪おうとしていると話したが、麻薬を加工して王都の貴族に渡すという非合法な方法で公爵の地位を手に入れた事が事実だと知り、三男と次女は館の窓から飛び降りて死亡した。
4.また、麻薬中毒になっていた公爵夫人が大量の麻薬を飲み込んで死亡したが、まだ赤子だった四女を踏みつぶした。それに憤慨した長女が公爵夫人の死体を滅多刺しにした後に泣き喚いた。
5.最終的に長男以外は治癒部屋へと運ばれて療養する事にした。そんな時に麻薬取引の商人とセバスが接触。最終的にセバスが商人からさらなる証拠を手に入れたのでそのまま王都へと伝書鳩を使った。
6.王都の兵隊が来て公爵領を分割して別の領に割り振る事と爵位の剥奪を話した。その兵隊が帰った後にダイマーを凍り付かせてから燃やし尽くした。
……ただ、そんな彼の元にラブコメの波動が来るとは予想していなかったので私は退散する事にした。一応私はこのラブコメには恋愛メンバーとして参加はしないというかしたくないしな……。