奇跡の雫とアンシュルテ
「……仲間を生き返らせる為に使う。」
「なら問題は無いな……。ただ何ヶ月か経たないと使えないぞ?」
「……そのくらいなら問題ないな。」
【奇跡の雫】という物は手に入れた時に捨てようかと考えたアイテムでもあるし、死者を生き返らせるのも面倒になる為必要は無いアイテムだった。ただ生き返らせるだけならば【王魂の林檎】でも良い筈だと思っていると、ガンダレスは首を横に振っていた。
「……アンシュルテには王の器は無い事が分かっているんだ。だからこそ【奇跡の雫】が必要という事だ。」
「…中和剤みたいな物か。」
「……そうなるな。」
そんな風に話しているとグドリャーフカがニッコリと笑いながらこちらを見ていた。呆然としていない所を見ると物わかりがいいのか?と期待するとグドリャーフカはまさに私の望み通りのリアクションを取ったのだった。
「……まぁ、ここで秘密にしておいた方が良いですからね。エグランシーバが狙われると面倒になりますから。犯罪者以外の差別が無い国の存在って決行重要なんですよ?それをみすみす逃すわけには行かないじゃ無いですか。」
「……つい先程まで攻めに来ていた奴とは思えないな……。さっきの言葉は本心なのか?」
「ホンシンニキマッテルジャナイデスカ。」
駄目だ、スキルにある【上辺面】のせいで余計に本心なのかが分からなくなっていた。常時じゃ無くて任意発動ってのが厄介な所だよな……と思いながら話を続ける事にした。
ここで【奇跡の雫】の存在に関して騒ぎ立てられると余計に面倒な事になるだろう……いや、国王が扇城ならば何の問題も無いとは思うが、グドリャーフカがそんな判断が出来る人間で良かったとも思えるのだった。……何かしら企んでいる様な不気味な笑みを見せなければ本当にそう思えただろうな~と感じるけどね……。
「しかしアンシュルテを生き返らせてジルフェが嫉妬するなんて事は無いのか?」
「……アイツに関しては何も言ってこないだろう。」
……まぁ、ジルフェってそこまで敏感じゃないから問題無いのか?と思えてくる。なんせ男装している私を見ても何も言わず、私が今の状態になってから数日ほどは殺気を常に向けてきていた。もっとも私達がガンダレスに恋愛的感情を向けていないと分かるとすぐにその殺気も無くなっていたしなぁ……。
「………用は済んだ。少し休ませて貰おう。」
「まぁ、不眠不休でやってもペース変わんないしな……」
「でもこの穴が塞がるのって何年かかるんでしょうね……。この高さだと橋を架けるのも一苦労しそうですし。」
グドリャーフカの言うとおり、橋なんて物でどうにかなる問題では無いよな……と思いながら【土魔法】で穴を埋める作業に戻るのだった。