グドリャーフカ-3
「あれは15年前ほどの出来事ですかね……。私は当時9歳でした。確かアスラ皇帝は既に50歳となっていた様な気がしますね……一応、悪魔と人間のハーフでしたから。」
「悪魔らしさはあまり見られなかったんだが……。」
「それは悪魔は悪魔でも人間に近い姿の者でしたからね……。ガイゼという前皇帝は誰でも犯す事で有名でした。それは侵略した国の女を必ず一度は抱いている程ですよ。」
グドリャーフカはそう言いながらため息を付いていた。何かしら事情があるのだろうと聞いてみると中々ハードな話だった様に思う。まぁ、グドリャーフカはそれを気にしていない様子なので私は何も言わないでおく事にした。
「まぁ、犯さない対象も決まっていましたけどね……自分の子供だけは抱くことはありませんでした。なので私はアスラ皇帝の子供という事になりますね。遺伝子情報だけでの話ならば……ですが。」
ただ、書類上でのグドリャーフカの父親は子を成せない身体となっていた。なので仕方なくガイゼの子供を育てる事に迷いは無かった。愛する妻の子供なのだから……それに妻もガイゼに心までは許さなかった。……だからこそ、ガイゼは気に入らなかった。そんな私利私欲と言える我が儘でグドリャーフカの母は首を絞められ殺されたという。
「……それで父はガイゼを殺しました。隕石を落とすというのは父が元々研究していた魔法でした。ですがその規模は父の思いよりは小さかった為、国が滅びることは無かったのですが……ガイゼは頭蓋骨を貫通して隕石に脳を潰されて死亡しました。」
「……なんつーか死に方がエグいな。」
「まぁ、皇帝等の最期なんてそんな事が多いと思いますよ?貴方にも心当たりはありそうですし。」
まぁ、確かに無数の凶器で滅多刺しになったり、首を一回転させられて首の骨を折られたりと、皇帝達の最期は呆気ない物しか見ていない。そう考えているとグドリャーフカはこう言い始めた。
「ちなみにアベルという外から来た者以外の将軍は全員ガイゼの子となっていますね。その母親が既婚者だったかそうでないかは覚えていませんけど。」
「……いや、本気で複雑な国だったなリューミケル軍帝国は!」
「でもそのおかげで【王魂の林檎】の適性者が多いんですよね……。あまり強化されなかった人もいますけどね。私とかランルドロスとか。」
ただ、グドリャーフカが言うには美華家の連中はガイゼの子供では無い者が集まった感じだったらしい。……いや、どれだけ劣性遺伝子からしか産まれないようになっているんだよと突っこみながら私はグドリャーフカとの会話を続けるのだった。