グドリャーフカ-1
ジナシーファの鳥魔法に乗って他のメンバーやリューミケル軍帝国を裏切った者達は穴を塞ぐ作業に移っていた。徐々に魔力効率が上がっているので時間は短縮されているのだろうが、それでも底が見えないのは変わらないし、下に降りてみようとも思えないのだ。
「……流石にここまでの事をした英雄はいませんね……。」
「……時間が掛かるな……」
「瘴気の関係で私もあまり役に立てそうに無いですね……。」
一瞬で穴を塞いでしまいそうな3人もこのコメントをした為、地道に【土魔法】関連のレベルを上げて穴を塞ぐしか無かった。まぁ、暫くはこれ以外に面倒な事はしなくても良いだろうと思ったそんな時……リューミケル軍帝国から最後の刺客が現れたのだった。
「………ウチの皇帝がすみません。私はリューミケル軍帝国で宰相をやらせていただいていた者の1人、グドリャーフカという者ですが……エグランシーバの王、黒華鉄 扇城様はいらっしゃいますでしょうか?」
「私だが、何の様だ?」
「勿論、今回の戦に関しての話し合いですね。こちらの国は正直軍帝国として成り立たなくなったのでサクッと民国に変わります。面倒なので名前はそのままですけどね……。ただ、領地に関して少し問題があるんですよね……。」
その後、グドリャーフカは扇城を連れて少し離れた場所へと移動する。ただ私が彼女を見たときに厄介だと感じたのは【上辺面】というスキルの事だろうと思える。ただこのスキルを知った瞬間に私以外も混乱というか困惑するだろうと思う。なんせこれ、常時発動では無い。なので彼女が言うことが本心なのか上辺だけなのかという判断が余計に出来なくなってしまうのだ。なので扇城も厄介な相手と話していたのだろう。
「……で、話をするって言ってたのになんで私の方に来ているんですか?」
「いやいや、契約書にサインするだけで終わりですからね……。やっぱりリューミケル軍帝国を民国にするよりもこのエグランシーバと統合した方が楽ですから。」
グドリャーフカは淡々とそう言っていたがその後の一言は紛れもない本心だという事が分かる。なぜならその質問は戦が始まった直後に届いたあのメッセージからも明らかだろう。
「ミハナ家って貴方の前の世界ではどれだけ高名な貴族だったのですか?私はそれを知りたいのですよ。」
「……婿入りしてから妻が病死した時にようやく財団と呼べるレベルになったけど使用人に全然慕われない屑野郎の集団かな?少なくとも自分は貴族だ!とか言っても違和感ないけどそんな立場じゃねーよって奴だよ。公爵の病弱な娘の無能な婚約者って言えば分かるか?その婚約者は男爵の末子って条件の。」
「なんとなく納得できました。」
グドリャーフカはそう言った後、私達と同じように【土魔法】を使い穴を塞ぐ作業へと入っていくのだった。ただ、彼女は穴の底がどうなっているのかという好奇心から飛び込みそうな雰囲気を醸し出しているのだけどね……。