リューミケル軍帝国最終戦-4
「有効打が思いつかない限りこの国を守る事を意識して行くぞ……。あの木以外にも脅威は残ってるんだからな……。もっとも、戦闘面では無くて政治の面でなんだが。」
扇城はそう言いながらダイナマイト付きの矢でガトリング砲台等を潰していく。射程距離が長すぎるのは気にしない方が良いだろうと思うが、遠距離攻撃が全く効かず、接近戦も難しい事を考えると国を守る事に集中するしか無かった。
「やっぱり飛行能力が無いってのが問題だろ……。それに【浮遊】があったとしてもそこまで高くは飛べないから距離が稼げない……。ならここから対処するしか無いのか……【フレイスレズの赤槍】【ターヅィアーラ】【炎神に送るオーケストラ】。」
相手は木なので私は炎に関する【殺戮魔法】を放つ。【フレイスレズの赤槍】は炎神メルポッサムに仕えていたフレイスレズという騎士団が使っていた槍である。だがこの槍は1回唱えただけでも軽く2000本は生成される炎を常に噴き出しながら相手を貫く槍である。
ターヅィアーラは炎神メルポッサムが創造神ラキルから神託として受け取った、世界樹を燃やすためのチャクラムである。その為メルポッサムは世界樹を守る神とされており、逆に世界樹を滅ぼす存在でもあった。最終的に世界樹を燃やしてしまうのだがその理由は世界樹が人の命を蘇らせすぎた事で輪廻転生のバランスが崩れてしまったからという事らしい。……まぁ、【奇跡の雫】等の蘇生アイテムが未だに存在するので完全に燃やし尽くした訳では無いだろうが……あの木くらいならば燃やせるだろうと私は【炎神に送るオーケストラ】と合わせて使用したのだ。
「……これでも駄目なのか……?いやおかしいだろ!世界樹を燃やすと言われているチャクラムだぞ!少なくとも無傷ってのは有り得ない筈だ!」
防御力無視というチート性能のおかげでどうにか刃は通った物の、燃え上がらない。それに加え【ターヅィアーラ】で出来た傷もすぐに消えてしまっていた。……いや、明らかに可笑しいと思いながら茫然としている私に、扇城はこう話しかけてきた。
「……絡繰りが分かった。あれは木ではあるが木では無い……。いや、そもそも木の姿をしているから誤解させられていただけだな。」
「じゃあなんなんだ?」
「あれは恐らく闇の魔力が固まって出来ている物だろう。アスラが【闇魔法】メインなのはあの力からして明らかだ。」
つまり、私達は闇の塊に炎属性の攻撃を続けていた訳か……。本当に使用するべきなのは光属性なのだろうが……正直言って私と扇城は光属性で有効になりそうな物が無い。だが一応為す術無しの状態からは脱出出来たので良かったと思うのだった。