オコソール河-2
このなぞなぞの答えはお母さん=妻。妻が先に行く事から『つま先』が正解となる。普通の戦闘ならば確かに攻撃されにくい場所なのは確かである。だがしかし、苦戦するかに思えたつま先を巡る攻防は実にアッサリと終了してしまった。
「痛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!ちょっと何するんですか!」
「なんかうざいので仕方の無い事です。それに弱点を自ら言って良いのは強者で無ければなりません。【英雄・マディクダ】」
普通に剣などで斬るのは確かに難しい。しかしアドンはつま先を脚で踏みつぶされる事は想定していなかった。結果的にアドンはなぞなぞによるアドバンテージを活かせずにジルフェに拷問されてしまうのだった。
「……何しに来たんですかね?まったく………でも別の奴が来ても困るのでここで待機してましょうか……。」
アドンは単純に武功を上げて皇帝として即位した時に箔を付けようとしていた。その為彼は逃げ出さずに闘うことを選んだのだ。しかし彼のなぞなぞという物はまだ不完全でありなぞなぞとして相手に問わなければ効果持続時間がたったの三分となるからだ。
しかし彼はすぐにつま先を踏みつぶされた。それはもう、鉄の靴の中で親指から順番にブチブチィ!!と音をたてながら破裂させられるレベルの痛みを味わった。ただ、人間は足の指が無くなっただけでは死ねない。しかし足の指を無くし足で蹴り込む事が困難になったアドンはその場から離脱する事も出来なかった。【転移】系の魔法が使えれば良かったのだが、彼はなぞなぞが決まれば雑な剣舞を見せてくるだろうというほどにこの世界の人間を舐めてかかっていたのだ。
確かに転生物では転生した者が圧倒的な力を持っている事が多い。だが、この世界にはその転生者を遙かに凌駕する存在が多すぎる事に気付いていなかった。所謂井の中の蛙大海を知らずという状況である。まぁ、彼の場合は見た目だけで判断する事、その中でもムキムキな筋肉を基準としているのでアベルすら自分より弱いと信じて疑わなかった男なのでこうなるのも仕方の無いことだった。
そんな彼に待っていたのは生き地獄である。というのもジルフェが姿を変えたマディクダという人物は【拷問魔法】で受ける人間を死なせない、永遠に生き地獄を味合わせるという偉業を成し遂げた英雄なのだ。まぁ、なぜ生き地獄を作っていたかという理由の中に、彼女が信じる宗教の教えの中にある『許しは死なせる事である』という言葉からである。それに関してはまたエピソードがあるのだが、それは今話すべき事では無いだろう。