オコソール河-1
オコソール河は他の場所と比べると拠点にしたいか?と言えばしたくない様な場所である。しかし扇城はこの河をどう使うのかという事を知っていた。なんせオコソール河は通称流れなき河と呼ばれている程流れが遅い。その為【王魂の林檎】で強化する事に失敗した者達を送り込むには丁度良い場所だったのである。
「………胸糞悪い奴等は早めに殺しましょうか。【ディーモルテッド】。」
ゾンビの様な動きで蠢く者達を見てジルフェはディーモルテッドというどこかの国の英雄の姿になった。このディーモルテッドは某国の将軍であり槍1本を一度薙ぐだけで敵国の兵6000人と砦1つを一刀両断したという伝説を持つ男である。その他の戦争にも彼の一撃は敵国を滅ぼす一手となっていた事から彼の力が強い事は明らかだろう。
「……これで終わり。」
彼女はそう言いながら一刀両断されて【愚者の木】へと変化していく将軍候補の成れの果てを見届ける。ランルドロスの【愚者の暴木】とは違い、取り敢えず害悪な木になってみました感しか感じられない木を彼女はもう一度薙ぐだけで消滅させた。
「……いやはや、ここまで早く終わらせるとは思いませんでした……。でもこの力のおかげで私は存在できるのですがねぇ……。」
「……誰だ貴様は。」
「おっと、申し遅れました………私、アドン・リューミケルと申します。一応リューミケル軍帝国次期皇帝候補の1人です。ですがここまでされては捕虜として捕まる方を選びたいですねぇ……。恐らく何人かは生き残っている筈ですから。」
アドンはそう言っていたが、ジルフェは容赦無く彼の首を落とそうと槍を横に薙いだ。しかし彼の首は繋がったままであり、その現状からジルフェは後ろに跳び距離を取った。確かに斬ったはずなのに斬った感触が無かったのだ。
「ここでなぞなぞです。お父さんとお母さんがかけっこをしました。でも、お母さんが常に先に行ってしまいます。さて、ここで出てくる身体の部位を当ててください!それが私を殺す重大なヒントになりますから!」
ここで巫山戯た口調で言ったアドンは今年で25歳になる転生者だ。前世ではなぞなぞ集やゲームブック等の本でイラストを担当していた絵師であり、ある意味出題者よりも知識が豊富である。そんな彼の能力が『なぞなぞの答えを単体攻撃されない限り無敵』という物であり今回の答えは確かに難しいだろうと思える。
ただ、フラストレーションの高まる彼女にとってそれはあまり意味の無い物だったと後にアドンは後悔する事になる。それだけ痛みが増えてしまう事に彼は気付いていなかったのだった。