エケセント山-6
ガンダレスはアベルが去った後を追う事はせずにアンシュルテの死体を確認する。何年も前に死んだ身体ではあるが、まだ来世の彼女は誕生していない。というよりも氷の中に魂ごと閉じ込められている様な状態だ。
「………まだ、アンシュルテのままで蘇生はできるな。」
ガンダレスはそう呟いた後、アイテムボックスから棺桶を取り出してアンシュルテの死体をその中に入れた。ここで【王魂の林檎】を使えば彼女は生き返るだろうが、彼女は王の器を持っている訳では無い為、最低でも【王魂の林檎】の副作用を打ち消す力をアンシュルテに付与しなければならなかったのだった。
「……取り敢えずアイツに頼るか……。」
ガンダレスはそう呟きながら剣城の持つ【奇跡の雫】を使おうと考えていた。【鑑帝】での説明文には存在していないが【奇跡の雫】は【王魂の林檎】の副作用を抑える薬でもあるのだ。ただ、剣城は既に1回使っているため、蘇生するまでに最低でも10ヶ月は掛かるがそれだけでも普通の蘇生と比べたら充分短縮されているだろう。
「……ジルフェも問題なく帰ってくるだろうが……。」
アンシュルテとは特に何も無かったので大丈夫だろうとガンダレスは思っていた。まぁ、実際にアンシュルテはガンダレスに恋愛感情は持っていない事、同じマクベスのメンバーだった事もありジルフェは彼女に対して殺気を出す事は無いと考えていた。
「……さて、これからどうするかな……。」
ガンダレスはそう言いながらエケセント山を下山し始めた。その途中に何度か兵が出てきたが瞬殺している為、特筆する事も無く下山は終了した。……ただその後、彼はランルドロスが【愚者の暴木】を見た事からそちら方面へとゆっくり進んでいく事にしたのだった。もしかしたら自分もあぁなってしまうのでは無いか?と少し怯えてはいるがそれは無いかとも感じているガンダレスは厄介事を早く終わらせようとでも言うかの様に、しかしアンシュルテの死体を粉微塵にしないようにゆっくりと歩いて行く。
ガンダレスがどれだけ強者であってもある気だとスピードは出ない。結局彼がそこへ辿りつくまでには数時間かかるのだが、来てからは早く終わらせられるだろうという事も事実だろう……というか、アベルを逃がした事による苛立ちとフラストレーションの解消の為なのか、【愚者の暴木】にたどり着いた瞬間にそれを破壊していたのだった。もっとも、素材などを残す様なレベルでは無く、あれほど頑丈だった【愚者の暴木】が一瞬で灰になるレベルの攻撃なので転生者2人は唖然としながらその光景を見ることになったのだった。