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エケセント山-5

アベルの殺したアンシュルテという少女はガンダレスが率いる騎士団マクベスのメンバーだった。彼女は大人らしい身体をしているが言動はどこか幼く、心を早く大人にしたいと願ってやまない感じだったとガンダレスやジルフェは覚えている。


そしてアンシュルテは剣城の使う【殺戮魔法】に似た魔法である【拷問魔法】の使い手でもあった。ただその力は拷問よりも処刑に近く、長く苦しんで死ぬというタイプの拷問と言えば通じるレベルで、暴発した時はガンダレスやジルフェ、その他のメンバーがどうにかして止めていたくらいだ。


「……まぁ、ダレっちみたいに死体から能力を発動させる事が出来ないのが本当に残念や。あれがあれば俺っちはもう少し悪人として見られやすくなったっちゅーのに。拷問のように人殺せるって最高やん。」

「………黙れ。」

「いや黙らへんって。なんせ俺っちは悪人になりたいからなぁ。でもダレっち殺せる気もしなくなったからトンズラしよーか。ここまで付き合ってくれた例にこれ返しとくわ。」

「………っ!」


途中で戦闘を放り出してアベルが投げたのはアンシュルテの死体だった。氷漬けにされた挙げ句心臓部分が貫かれており、氷の中が紅く染まっているため血も出し切られただろうと思われる。それに加えて身体も所々ねじ切れており普通ならば再生も出来ないであろうレベルになっていた。だが死体がこちら側に帰ってきた事でガンダレスの抱くアベルへの悪という感情がどう変わるのか、アベルは楽しみにしていた。


「生き返ればダレっちの認識は変わらずにもう1人俺っちを悪人にする奴が増えるし、生き返らせなければダレっちはさらに俺っちを悪人として認識する……どちらに転がっても問題は無いわな。ただ、あの嬢ちゃんが死ぬかどうかはアイツ次第やしなぁ……。でもなんか聞き覚えある言葉を話すんやよなぁ……なんなんやろ?」


アベルはジルフェと闘うであろう将軍の事を不思議な奴として捉えていた。答えとしては簡単な事でアベルは元々転生者の意識が移り住む筈だった身体だ。しかし彼の悪意に飲み込まれた転生者の思念は、現世での記憶だけを残して消滅した。それにアベルは気付いていないためこの様な事が出来る他、周りから善として見られてしまうのだ。


「まぁ、気にしたら負けやな。ただこのリューミケル軍帝国も引き時やな……捕虜って1番しんどい立場やしなぁ……やっぱ流浪人の立場がもっとも楽やわ~。」


こうしてアベルはガンダレスのフラストレーションやら苛立ちを最高潮にしたまま闘いを放棄して去って行くのだった。

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