戦の兆し-2
「一応これが担当地域となるから目を通しておいてくれ。まだ紹介していない奴もいるがそれは気にしないで貰いたい。ただ、敵の拠点となる所にそれぞれ配置しておく事を忘れないで貰いたい。」
扇城がそう言いながら羊皮紙を私達に配ってくる。するとそこに私の名前は無かった。まぁ、私は対歩兵戦を担当させられるのだろうと思う。一応『王魂の林檎』持ちだった奴には勝っているがあれはガンダレスと比べると雑魚の中の雑魚レベルだったのだ。なので内漏らしを全滅させる方針で闘うことが決まったのである。
「アカサ樹海担当は黒姫とランタン、イキシマ旧砦はアルミナとシューカ、ウクス渓谷はテンレ、エケセント山はガンダレス、オコソール河はジルフェ、クナット旧砦は大橋、カグヤ、アル。で、ラミアの里はジナシーファとヒルージュだな。ただ、調査隊としてグランケとミッシェルにも出て貰う。」
「………クナット旧砦の戦力は非常に低いように感じるが……」
「いざとなれば神威がそちらに行くことになる。ただ、クナット旧砦は拠点の位置としては良いんだが……色々あるんだ。少なくとも死なないようには配慮するから心配しないでもらいたい。」
扇城がそう言うとなんとなく納得させられてしまうが、まぁアルも結構やり手なので時間稼ぎは出来るだろうと思う。それに余程の相手でなければヘルムライダーの装甲を破られることは無いだろう。
「……でも敵の情報はそこまで多くないんだな……。」
「そうだな。ただあの国の盗賊の中に美華家の血筋の者がいたらしいから相当きな臭い奴等が将軍をやっている様に思うぞ?あれが将軍になっていないだけ運営は出来ているのだろうが。」
扇城へため息を付きながらそう話していた。まぁ、美華家の人間はどうしてかまともな人間に転生していないんだよなぁ……。ある時は人を奴隷と罵っていたら雑魚な狼に首を噛み千切られて死んでいった奴や何でもかんでも自分の思い通りになると25年間ぬくぬくと暮らしてきてから死んだ孫に会いたくて灰になった者……またある時は人の物をちょーだいと喚きながらも正当な対価の支払いを拒否して強奪しようとする一般人……で最期に盗賊の小間使いか……。
「向こうの世界でもそろそろ没落しそうだからなぁ……。こちらの世界ではだれも成功していないから実力の無さはよく見えるよ。……せめてこちらの世界でも市長位置族くらい図々しくも前世の地位を維持する気概は見せて欲しかったよ。どちらにしろ従うことはなかっただろうけどさ。」
私がそう言うと扇城はうんうんと頷いた後、明日にはそれぞれの配置に移動する事を話した後、一旦この集まりを解散させたのだった。まぁ、まだ昼食食べていない頃合いだったしね……。




