魔法でヒーローショー-1
「そういえばヒーローショーもやってるんですよ。著作権が無いような物なのでスーツはそっくりに作っても良いんですけど……肝心のストーリーが中々思い出せないのでヒーローショー的な感じの寸劇ばかりですね……。」
未だに頬に紅葉を貼り付けたオーレンはそう言いながらヒーローショー用のステージに案内してくれた。ただヒーローショーは男児向けの物が多く、女児が喜ぶような魔法少女系の物が無かった。
「ちなみにスーツはこんな感じですね。本当は魔法礼装的な感じで変身シーンも取り入れたいんですけど難しいんですよね……。自警団の方々に協力して貰うと会場が壊れかねないほどの威力を持つようになってしまってますし。」
「だから一般人でアクションが出来る人を探さないといけないのか……。」
「魔法少女系ならトークでも良いんですけどあれはこちらの世界では受け入れがたいですからね……。人間の着ぐるみは誰でも出来るけど子供達が怖がるんですよ……。」
普通に考えればあのデカ顔無表情な着ぐるみはトラウマになる物も多くなりそうだよなぁと思いながら私はヒーローショーを、見学する。ただヒーローショーのステージは従来のステージでは無く闘技場の様な形で観賞する感じだった。
「今やっているのは結構古いヘルムライダー アックスですね。」
「完全に知らないんだがこれ本当にヘルムライダーなのか?」
「まぁ改造人間的なヘルムライダーを知っている人が少なくなってますからね……。もっともこちらではかなり設定変えてますけどね。改造人間だと言われたら殆どの人達が自分の体を改造してとどこかのマッドサイエンティストに頼み込みに行きそうですから。」
その為本来ならばポーズの後に肉体変化したというのでは無く、体にエネルギーを纏わせて変化させたという様な変身の設定になっている。ただこのアックスというライダーは基本的に木の様な怪人としか闘わないらしく今回の相手もトレントとなっている。
「……変身アイテムなら魔方陣とか使えばどうにか出来るんじゃ無いか?」
「それで試してますけど中々出来ないんですよね……。なので今は直接スーツを着るという感じでやって貰ってます。まぁ結構人気がありますからね……このまま盛り下がらないように続けていきたいです。」
オーレンはそう語りながら闘技場で闘うヘルムライダーを見つめていた。ここで紅葉が頬に残っていなければ少しだけカッコいい奴に見られたのだろうが、今の彼からは出勤前に奥さんと喧嘩して理不尽なビンタを喰らってしまい、跡について後輩に聞かれて「妻にビンタされてね……」と哀愁漂わせる上司にしか見えないのだった。