天錬組と黒華鉄家-1
「………まぁ、この辺りに転生者がいるんだろう。」
「普通はそう考えるわよね……。こんな物がファンタジーな異世界にあるなんて思わないもの……。」
私と大橋がそう話していると、着流しを着た少女が欠伸をしながらキャンピングカーから出てきた。その様子を見て大橋は何も思っていなかったが、私はすぐに戦闘態勢を整えた。これはカグヤ以外の全員も同じでカグヤは馬車の中へと避難していた。まぁ、カグヤは目立った戦闘能力が無いしね……
「………お前、何者だ?」
「……水臭いのぉ。ここまで面妖な集団と一緒とは思って無かったが、そんな姿をしているとは中々よの。鷹城の娘、扇城よ。まぁ、この姿じゃあ分からんか。儂はテンレ。昔の名は十戸軒 厳山じゃ。」
「………勘違いされているな。扇城は祖父の姉の名前で、私の名前は剣城だ。お前とは前世で会ったことすら無い。」
「……なんと。まぁ扇城と瓜二つな事に変わりはせん。しかし楝蛇木の者を連れとらんのはなんでじゃ?愛想でも尽かされたか?」
「違うな。黒華鉄家から一旦離れただけだよ。私の糞親父がやらかしたからな。」
「成る程のぉ……。しかしやくざを辞めた幼馴染の鷹城に曾孫がいるとは思わなんだ。」
どうやら黒華鉄家は曾祖父の前の時代ではやくざとして通っていたらしい。まぁ、曾祖父がやくざを辞めて普通に会社経営したというのが正しいのだろうと思える。
「だがしかしこの世界で会うとはまさに運命じゃが少々気に喰わん事があるのじゃ。お主には分からんじゃろう……この体になってから感じているこの虚しさを!!」
いや、分からんと思っていたのだが大橋からの耳打ちで彼が前世では男だったという情報をくれた事で彼女の怒りが分かった。まぁ、それを私に言われても仕方ないんだがな……。
「こんな体じゃあ娼館にすら入れて貰えねぇからな……。奴隷達と楽しむにもこの胸だと面白くねぇんだ……。だからよぉ、その胸を俺に渡せ。」
「できるのならそうしたいが無理だな。私はこの体からは逃れられない運命なんだよ。」
「それに関しては同感だなぁ。黒華鉄の女どもはどう足掻いても巨乳にしかならなかったんだ。サラシでどれだけ抑えようと成長スピードの方が早ぇし、絶壁で何年か過ごしてもいきなり巨乳になるなんてザラだったぜ。」
そう言われて私も心当たりがあった。あの【王魂の林檎】を食べてこの体になってしまっている。まぁ、食べなければ死んでいたのでテンレの言う運命に従わされているのだろう。そう思いながら私はテンレから視線を外さずに戦闘態勢を崩さないのだった。